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沖縄県首里方言の自然談話

共通語 方言(音声記号) 方言(かな) 音声
私は 首里の 汀良町の 真栄平の 三男 タルミガニー(樽御金)です。 wanneː suinu tiʃiraʒinu meːdeːranu sannaɴ tarumiganiː deːbiru. わんねー すいぬ てぃしらじぬ めーでーらぬ さんなん たるみがにー でーびる.
今日 あなた様に やまとの 桃太郎の お話を 申し上げます。 tʃuː nuɴʒunaːŋkai (注1) jamatunu momotaroːnu ʔuhwanaʃi nunnukijabiːɴ. ちゅー ぬんじゅなーんかい やまとぅぬ ももたろーぬ ^うふぁなし ぬんぬきやびーん.
桃太郎と いうのは お名前です。 momotaroːndi ʔiʃeː ʔunadeːbiru. ももたろーんでぃ ^いしぇー ^うなでーびる.
沖縄の 首里の お名前に なおしたらですね、真桃 真桃樽御金と いう お名前に あたるだろうと思っております。 ʔutʃinaːnu suinu ʔunaŋkai noːʃiːneːdeːbiru. mamumu mamumutaruganidi (注2) ʔiru ʔunaŋkai ʔataieːsanindi ʔumutoːjabiːɴ. ^うちなーぬ すいぬ ^うなんかい のーしーねーでーびる. まむむ まむむたるがにでぃ ^いる ^うなんかい ^あたいえーさにんでぃ ^うむとーやびーん.
今から 申し上げます。 namakara nunnukijabiːɴ. なまから ぬんぬきやびーん.
昔 あるところに おじいさん おばあさんの お二人方の おとしよりが いらっしゃいましたが。 mkaʃi ʔarutukuruŋkai ʔuhuʒuɴʒanaʃiːmeː haɴʒanaʃiːmeːnu ʔutatukurunu ʔutusuinu ʔutʃeːɴseːbiːtaʃigadeːbiru. んかし ^あるとぅくるんかい ^うふじゅんじゃなしーめー はんじゃなしーめーぬ ^うたとぅくるぬ ^うとぅすいぬ ^うちぇーんせーびーたしがでーびる.
ある時 おばあさんが おじいさんに 申し上げました。 籬内(御殿の内)にいらっしゃるので お寂しくて いらっしゃるので お散歩なさる時に お供を 御一緒に させて 下さいと 申し上げました。 ʔarututʃi haɴʒanaʃiːmeːga ʔuhuʒuɴʒanaʃiːmeːŋkai munnukiːru ʔukutunideːbiru. maʃiʔutʃini ʼuibiːreːdeːbiru kukutirusa ʔaibiːreːdeːbiru guhujoːmiʃeːru ʔubasuni nuɴsuʒutʃi ʔumaʒuɴ ʼugamatʃi ʔutabiɴseːbirindi nunnukiti sabitakutudeːbiru. ^あるとぅち はんじゃなしーめーが ^うふじゅんじゃなしーめーんかい むんぬきーる ^うくとぅにでーびる. まし^うちに ういびーれーでーびる くくてぃるさ ^あいびーれーでーびる ぐふよーみしぇーる ^うばすに ぬんすじゅち ^うまじゅん うがまち ^うたびんせーびりんでぃ ぬんぬきてぃ さびたくとぅでーびる.
おじいさんも よいと おっしゃいました。 ʔuhuʒuɴʒanaʃiːmeːɴ ʔujataʃantʃi miʃoːtʃideːbiru. ^うふじゅんじゃなしーめーん ^うやたしゃんち みしょーちでーびる.
ある 時に お二人方 お出かけなさって 野山を御覧に いらっしゃいました。 ʔaru ʔututʃini ʔutatukuru ʔuɴʒiɴʃoːtʃi nuːjama nuŋkakiːga ʔutʃeːɴʃoːtʃi sabitakutudeːbiru. ^ある ^うとぅちに ^うたとぅくる ^うんじんしょーち ぬーやま ぬんかきーが ^うちぇーんしょーち さびたくとぅでーびる.
大きな(広い) 野原の 側(わき)に 川が 流れていました。 dateːnnu nuːnu subaŋkai kaːranu nagaritideːbiru. だてーんぬ ぬーぬ すばんかい かーらぬ ながりてぃでーびる.
その 水の きれいさを ご覧になっていました。 ʔunu ʔubiːnu ʔutʃuraʃa nuŋkakimiʃoːtʃideːbiru. ^うぬ ^うびーぬ ^うちゅらしゃ ぬんかきみしょーちでーびる.
おばあさんが お手を お洗いになろうと 川に お降りに なりました。 haɴʒanaʃiːmeːga ʼntʃi ʔuʃimuʃiɴseːntʃi kaːraŋkai ʔuːriɴʃoːtʃi sabitakutudeːbiru. はんじゃなしーめーが んち ^うしむしんせーんち かーらんかい ^うーりんしょーち さびたくとぅでーびる.
川の 上の方から 大きな 桃が ドンブリコと 流れて 来ました。 kaːranu ʔwiːkatakara dateːnnu ʔumumunu juttai kwattai (注3) nagaritittʃi sabitakutudeːbiru. かーらぬ ^うぃーかたから だてーんぬ ^うむむぬ ゆったい くゎtたい ながりてぃっち さびたくとぅでーびる.
それを ご覧になって 珍らしい、珍しい 桃と ご覧になって お取りになって ご一緒に おあがりになるとて 御殿に お持ちになって お帰りになりました。 ʔuri nuŋkakiti miʒirasanu miʒirasanu ʔumumutu nuŋkakimiʃoːtʃi ʔutuɴʃoːtʃi ʔumaʒuɴsaːni ʔwaːgaɴʃeːntʃi ʔudunuŋkai ʔumutʃiɴʃoːtʃi ʔutʃeːɴsoːtʃi sabitakutudeːbiru. ^うり ぬんかきてぃ みじらさぬ みじらさぬ ^うむむとぅ ぬんかきみしょーち ^うとぅんしょーち ^うまじゅんさーに ^わーがんしぇーんち ^うどぅぬんかい ^うむちんしょーち ^うちぇーんそーち さびたくとぅでーびる.
その 桃が 二つに 割れました。 中から 男の 赤ちゃんが お生まれになりました。 ʔunu ʔuumunu ʔutaːtʃiŋkai waritideːbiru. naːkakara meːwikiganu ʔaka ʔumiŋgwanu ʔumariɴʃoːtʃi ʃabitakutudeːbiru. ^うぬ ^ううむぬ ^うたーちんかい わりてぃでーびる. なーかから めーうぃきがぬ ^あか ^うみんぐゎぬ ^うまりんしょーち しゃびたくとぅでーびる.
お二人方は 大層 お喜びになりました。 ʔutatukuru ʔippeː ʔubukuɴʒanaʃiːmiʃoːtʃi. ^うたとぅくる ^いっぺー ^うぶくんじゃなしーみしょーち.
この 赤ちゃんは 天から さずかった 児と 思われて、ご覧になって、 ご自分達の お子と お考えになって お育てになりました。 kunu ʔakaʔumiŋgwaː ʔutiŋkara saʒakatoːru ʔumiŋgwa nuŋkakiti nuɴʒunaːnu (注4) ʔumiŋgwatu ʔuʃoːʒiɴʃoːtʃi ʔusudatiɴsoːtʃi sabitakutudeːbiru. くぬ ^あか^うみんぐゎー ^うてぃんから さじゃかとーる ^うみんぐゎ ぬんかきてぃ ぬんじゅなーぬ ^うみんぐゎとぅ ^うしょーじんしょーち ^うすだてぃんそーち さびたくとぅでーびる.
この 赤ちゃんは 桃から お生まれになったので 桃太郎という お名前を おつけになりました。  kunu ʔaka ʔumiŋgwaː ʔumumukara ʔuɴmarimisoːtʃakutu momotaroːndiru ʔuna ʔutʃikiɴsoːtʃideːbiru. くぬ ^あか ^うみんぐゎー ^うむむから ^うんまりみそーちゃくとぅ ももたろーんでぃる ^うな ^うちきんそーちでーびる.
桃太郎は 立派に 成長しました。  momotaroːja ʔusudatʃiʒurasa (注5) ʼugamattideːbiru.  ももたろーや ^うすだちじゅらさ うがまってぃでーびる. 
年々 歳々 成長していきました。 お二人方も 年々 歳々 幸福に なられたとの ことでございます。 niɴmasai tʃitʃimasai mihudu ʔwiːti sabitakutudeːbiru. ʔutatukuruɴ niɴmasai tʃitʃimasai ʔubukuɴʒanaʃiː miʃoːtʃandinu ʔukutudeːbiru. にんまさい ちちまさい みふどぅ ^うぃーてぃ さびたくとぅでーびる. ^うたとぅくるん にんまさい ちちまさい ^うぶくんじゃなしー みしょーちゃんでぃぬ ^うくとぅでーびる.
注1 nuɴʒuna: nuɴʒuɴ=mjuɴʒuは二人称の貴族に対する敬語。-na:をつけると二人称の複数形であるが、相手が一人の場合でも慣習的に複数形を使うことがしばしばある。
注2 mamumutarugani ma-は士族以上の男女の童名につける美称の接頭辞。-ganiは男性の名につける美称接尾辞。貴族などの男の名の美称となる。mumutaru:《桃太郎》に接頭辞ma-と接尾辞-ganiがついた形。例:mautugani《真金》
注3 juttaikwattai 擬声語。① 桶・池・容器などの中で液体が揺れ動いて音を発するさま。 ② 物体がゆるやかに波にもまれて、波とぶつかって音を発するさま。
注4 nuɴʒuna: ① 注1 に同じ。 ② 御自分たちの
注5 ʔusudatʃiʒurasa 育ちが美わしい。立派に生長していること。sudatiʒurasa