イベント

令和6年度 第1回「危機言語の保存と日琉諸語のプロソディー」合同研究発表会

開催日時
2024年6月15日 (土) 10:00~16:00
開催場所
国立国語研究所多目的室およびオンライン(Zoomミーティング)
※参加(対面 or オンライン)をご希望の方は、6月13日(木)までに事前登録フォームからお申し込み下さい。後日,それぞれの参加方法の詳細をメールにてお送りします。
※Zoomでの研究会の様子は録画します。
趣旨
2022〜2028年度に行う日琉語諸方言の保存研究と,日琉語諸方言のイントネーション研究プロジェクトの共同研究員による研究発表会です。プロジェクト2年目の第2回目の今回は両プロジェクトの共同研究員による音声および文法に関する様々な研究発表を行います。
問い合わせ先
h-oshima [at] ninjal.ac.jp ([at]を@に変えてください)

参加費無料・事前申込必要

プログラム

  • 「八重山語の再生:イデオロギーと実践の学際的探究」

    マシュー・トッピング(国立国語研究所)

     本研究は、参加型アクション・リサーチ(PAR)の方法論を適用した質的実践研究である。パーソナルインタビューおよび消滅危機言語継承活動の観察を通して沖縄県石垣市の2つの地域において,八重山地方の継承言語である八重山語「ヤイマムニ」の四箇方言「シゥカムニ」に対して研究協力者が持つ言語イデオロギーと活動の実践方法を紹介する。継承活動として協力者は「マスター・アプレンティス語学学習」(MA)という消滅危機言語再活性化の手法を応用している。また,PARは社会科学研究の協調性を強調するため,本研究の方法論として採用した。本発表では具体的に(1)八重山語とその消滅危機の現状,(2)MAの特徴,(3)データ収集・分析方法と(4)石垣市での活動の背景および主なインパクトを順番に焦点をあてて論ずる。

  • 「沖永良部語復興can-doリスト作成の試み―「島むにサロン」参加者とのブレインストーミングに基づいて」《オンライン発表》

    岩﨑典子(南山大学)、高 智子(独立行政法人国際交流基金関西国際センター)

     言語使用者がその言語で「何ができるか」のレベル別の例示記述文であるcan-do statements(以下「can-do」)を含むヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)が言語教育などに広く援用されている。本発表では,沖永良部語(以下,「島むに」)の学習カリキュラム構築や独学のセルフチェックの際に役立つよう,発表者らが作成を手がけ始めた沖永良部語復興can-doリストについて報告する。まず,島むにを身近に感じて復興を願うコミュニティメンバーが月1回集う「島むにサロン」で第1回のブレーンストーミングを行い,メンバーが(自分,若い世代,子どもたちが)島むにを使って何ができることを望むのかを聞き出し,can-doを抽出してリストを作成し,CEFR等を参照して言語運用能力のレベル分けを行なっている。言語運用能力には,CEFRが扱う「理解」「産出」「やりとり」「(文化・言語間の)仲介」の能力の他に,言語復興に有用な能力として,相手の島むにの知識に合わせて島むにを部分的に使う「混成」の能力を加えることにした。

  • 「コミュニティの主体的な記録保存と継承保存の例」

    山田真寛(国立国語研究所)、横山晶子(国立国語研究所)

     消滅危機言語の記録保存も継承保存も,持続可能なものにするためには地域言語コミュニティメンバーが主体となる取り組みが不可欠である。本発表では沖永良部島の2つのプロジェクト(三世代参加プロジェクトと公民館講座)を例に,それぞれの概要,アウトプット,アウトカムを報告し,コミュニティの主体性を奨励する方法について議論する。

  • 昼休み

  • 「宮古語諸方言における複数形式に関する継続調査―類型化に向けて―」

    大島 一(国立国語研究所)、セリック・ケナン(国立国語研究所)

     本発表は,昨年度から実施している宮古語諸方言における名詞の複数形式の継続調査の結果を報告するものである。今回の発表では,宮古語各地点における複数形式関連の類型化に向けて,以下の2点を中心に論じる。  
     第一に,宮古語のどの地点も少なくとも2つの複数形式,すなわち,名詞階層性の高い名詞に付く形式と,名詞階層性の低い名詞に付く形式を有している。しかし,名詞階層性においてこれら2つの形式が付き得る範囲が方言によって大きく異なる。基本的に,複数形式の付与がヒト名詞に限定される方言と,複数形式の付与がどの名詞でも可能な方言がある。第二に,複数形式がどの非ヒト名詞でも付与できる場合は,方言間で意味的機能の違いが観察された(①累加,②集合的例示,③Distributive(多種の構成員)など)。

  • 「文焦点(Thetic)文における主題標示とその条件の再検討:宮崎県椎葉村尾前方言を中心に」

    廣澤尚之(九州大学大学院人文科学府博士後期課程)

     宮崎県椎葉村尾前方言は主題助詞「ワ」を持つが,その分布は標準語より広く,特にいわゆる文焦点(Thetic)文の一部で主語に主題助詞が現れうることは注目に値する。発表者はこれまで,①主語が文脈に既出のとき,②存在(Presentational)ではなく出来事を表す(Event-reporting)文のとき,という2つの条件を挙げ,①,②いずれかの条件を満たすとき,文焦点文でも主語に主題助詞が現れうると記述してきた。
     本発表では、直近のフィールドワークに基づき,上記の記述を2点修正する。まず,条件①を満たしていないにも関わらず主題助詞が認められる特殊な文脈があることを報告する。次に,②によって主題助詞が出現するためには述語にアスペクトの制限があることを示す。

  • 休憩

  • 「北琉球沖縄語伊平屋方言の疑問文の構造とイントネーション」《オンライン発表》

    サルバトーレ・カルリノ(大東文化大学)

     本発表では沖縄語伊平屋方言の疑問文の構造とイントネーションの実現について概観する。まず疑問詞疑問文で使用される疑問語と,共起する形式を概観する。次にY/N疑問文で現れる,疑問を現す形式を概観する。次にそれぞれの疑問文のタイプのイントネーションの実現を概観し,日琉諸語及び世界の言語の疑問文イントネーションの言語類型論的位置づけについて検討する。

  • 「九州方言における動詞ラ行音節の実現について-日本語諸方言コーパスに基づいた調査報告-」

    佐藤久美子(国立国語研究所)

     日本語の自然談話では,子音/r/を含む音節(以下,ラ行音節)が撥音化・促音化することがある(「ワカンナイ」分からない,「クッカラ」来るから,等)。このような現象は全国に広く観察されるが,頻度や環境は方言によって異なることが部分的に指摘されている。本発表では日本語諸方言コーパス(Corpus of Japanese Dialects: COJADS)を用いて,九州方言の自然談話データにおいて動詞ラ行音節がどのように実現するかを調査し,その実態を報告する。具体的には,以下の三つを指摘する (i)撥音,促音,長音が観察される (ii)それぞれの有無と頻度は地域間で大きく異なっている (iii)福岡方言と熊本方言では,音交替が生じる環境に他方言に見られない特徴がある。

令和5年度 第2回「危機言語の保存と日琉諸語のプロソディー」合同研究発表会

開催日時
2024年3月17日 (日) 10:40~15:40
開催場所
国立国語研究所多目的室およびオンライン(Zoomミーティング)
※Zoom参加をご希望の方は、(事前登録フォーム)からお申し込み下さい(登録後にZoom会議のURLと会議ID,パスワードが届きます)。
※Zoomでの研究会の様子は録画します。
趣旨
2022〜2028年度に行う日琉語諸方言の保存研究と,日琉語諸方言のイントネーション研究プロジェクトの共同研究員による研究発表会です。プロジェクト2年目の第2回目の今回は両プロジェクトの共同研究員による音声および文法に関する様々な研究発表を行います。
問い合わせ先
h-oshima [at] ninjal.ac.jp ([at]を@に変えてください)

参加費無料・(Zoom参加に限り)事前申込必要

プログラム

  • ※サルバトーレ・カルリノ氏の発表は都合により中止となりました。
  • 「八重山語の韻律体系」

    セリック・ケナン(国立国語研究所)

     本発表では,調査研究の最新の成果に基づき,八重山語諸方言の韻律体系の特徴を概観し,方言間のバリエーションを説明するための変数を整理する。まず,共通点として,八重山語のほとんどの方言では音節より上位,文節下位の韻律単位(いわゆる「韻律語」)が数えの単位として機能しており,ピッチ変動の有無と位置(1番目か2番目の韻律語)によって少なくとも3つのアクセント型(a型,b型,c型)が区別されている。次に,方言間のバリエーションを捉えるためには,ピッチ変動の方向(上昇か下降),韻律語内におけるピッチ変動の実現位置(次末音節か末尾音節),b型をめぐる中和現象(アクセント実現型,アクセント浮遊型,アクセント実現とアクセント浮遊の共存型),語の長さによる対立数の制約の有無(単純語・複合語三型,単純語二型・複合語三型)の変数が必要であることを示す。それに加えて,語頭分節音の有声性を条件とした声調派生(波照間・白保方言)や,語末母音を条件とした声調派生(西表西部諸方言)の結果によって新しく生じたアクセント型の対立も見られる。以上を踏まえて,通時的な観点から八重山語の韻律体系が経験している変化の方向性について簡単に述べる。

  • 「白山麓方言の授与動詞体系」

    松倉昂平(金沢大学)

     本発表では福井県大野市上打波方言の授与動詞体系の記述を行う。上打波地区は大野市の北東部にあり石川・岐阜県境に接する白山麓の山村で,同じく白山麓にある石川県白峰方言や富山県五箇山方言との間には語彙・文法面で多くの共通点がみられる。授与動詞体系の類似もその一つで,例えばクレルに視点制約がない(求心的授与にも遠心的授与にも使われる)点も3方言の共有特徴である。イクス(共通語の「寄越す」に対応)も五箇山と上打波では視点制約がなく両方言ともに特殊かつ類似の補助動詞用法を有する。上打波ではヤル,クレル,イクスの3語に加えて,様々な待遇語(クレルの尊敬語にあたるオグレル,タモルや,クレルの軽卑語にあたるカスなど)の使い分けも問題となる。
     特に五箇山方言の授与動詞に関しては詳細な記述が残されており(日高1994,2007など),先行研究(五箇山方言)と対照する形で,上打波方言の記述・分析を行っていく。

  • 昼休み

  • 「動詞接辞を中心とした高知方言のTAM体系」

    中澤光平(信州大学)

     本発表では,高知県高知市および南国市での発表者による現地調査で得られたデータに基づき,高知方言(高知市方言,南国市方言)のテンス・アスペクト・モダリティ体系について,動詞接辞を中心に形式と意味の整理を行う。とりわけ,次の点に焦点をあてて論じる。
    ・「ユー/チュー」の意味
    ・とりたて形
    ・他方言との比較対照

  • 「理由の接続助詞と終助詞・間投助詞の連接―首都圏・熊本・倉吉方言を対象に―」

    阪上健夫(東京大学大学院人文社会研究科博士課程)

     理由の接続助詞が文末で使用される場合,終助詞に近い用法がある。熊本方言や鳥取県倉吉方言の理由の接続助詞には,首都圏方言で「から」が用いにくく終助詞を用いた方が自然な文末用法がある。これは,接続助詞の終助詞化の程度に方言差があることを意味する。また,文末における接続助詞と終助詞の連接には,文中での間投助詞との連接とは異なる現象が見られる。本発表では,首都圏・熊本・倉吉方言話者を対象とした面接質問調査の結果にもとづき,これらの方言における理由の接続助詞の文中用法と文末用法の間の連接関係の異同を明らかにする。例えば,熊本方言では文中の場合「タイ」が間投助詞として理由の接続助詞に後続し得るが,文末では専ら「ネ」の類の終助詞が後続する。そして文末用法の場合は,「ヨ」「バイ」「タイ」が使われる形態統語環境で理由の接続助詞が使われ得る。ここから,文末で使われる理由の接続助詞は「ヨ」「バイ」「タイ」といった終助詞と範列的な対立関係にあることを主張する。

  • 休憩

  • 「宮古語大神方言 助辞カミとターシのふるまい」

    金田章宏(千葉大学名誉教授)

     宮古語大神方言の助辞カミとターシには日本語のマデと同様,格ととりたての用法がみられるが,カミにはそれ以外の興味深い用法がみられる。焦点化助辞トゥに類似した用法とのべたて文をはたらきかけ文に変える用法である。格ととりたての用法は大神方言以外の宮古語諸方言にもみられるようだが,それ以外の2つの用法については確認できていない。

みんなで談話整備プロジェクト文化庁「各地方言収集緊急調査」資料の整備と活用説明会&講習会

開催日時
2023年8月26日 (土) 13:00~16:00
開催場所
オンライン(Zoom)
参加申し込みは2023年8月24日 (木) までに、下記の参加申込フォームからお申し込みください。
https://forms.gle/K6AKM7j2zLQq93169。2023年8月25日 (金) にZoomのリンクをお送りします。
※いただいた個人情報は、個人情報保護ポリシーに則り厳正に取り扱います。
主催
■ 国立国語研究所 共同研究プロジェクト 「消滅危機言語の保存研究」
■ 科研費基盤研究 (A) 21H04351 「日本語諸方言コーパスによる方言音調の比較類型論的研究」
■ 科研費基盤研究 (A) 20H00015 「『全国方言文法辞典』データベースの拡充による日本語時空間変異対照研究の多角的展開」
■ 科研費基盤研究 (B) 23H00635 「方言昔話資料のデータベース化と言語研究への活用」
事前準備
データ整備講習会では、音声分析ソフトPraatを使用します。
講習会で使用するパソコンに、下記のサイトからPraatをダウンロードしておいてください。
https://www.fon.hum.uva.nl/praat/
問い合わせ
fumiko[at]ninjal.ac.jp ( [at] を@に変えてください。)
開催趣旨
「みんなで談話整備プロジェクト」は、『日本のふるさとことば集成』、「日本語諸方言コーパス (COJADS) 」の元データである、文化庁「各地方言収集緊急調査」資料のデータ整備作業を共同でおこなうプロジェクトです。 2022年7月に発足し、方言談話データの整備を続けてきました。今までの活動の報告も兼ねて、説明会と、データ整備講習会を開催します。 「各地方言収集緊急調査」資料の整備と活用をおもな目的としていますが、個人が調査で収集した音声データの整備にも応用することが可能です。

参加費無料・(Zoom参加に限り)事前申込必要

プログラム

  • 開会のあいさつ

    木部 暢子 (人間文化研究機構)
  • 「みんなで談話整備プロジェクト」の概要

    井上 文子 (国立国語研究所)
  • 文化庁「各地方言収集緊急調査」について思い出すこと、思うこと

    加藤 和夫 (金沢大学名誉教授)

     司会 : 竹田 晃子 (岩手大学)

  • データ整備を研究業績として評価するしくみ・データの共有

    山田 真寛 (国立国語研究所)
  • プロジェクトの連携・参加者のコミュニティづくり

    日高 水穂 (関西大学)、三井 はるみ (國學院大學)
  • 休憩・準備

  • データ整備講習会

    講師 : 黄 海萍 (国立国語研究所)

     アシスタント : 松岡 葵 (九州大学大学院)、宮岡 大 (九州大学大学院)

  • 閉会のあいさつ・参加者募集

    井上 文子 (国立国語研究所)

令和5年度 第1回「危機言語の保存と日琉諸語のプロソディー」合同研究発表会

開催日時
2023年6月10日 (土) 10:00~15:50
開催場所
国立国語研究所多目的室およびオンライン(Zoomミーティング)
※Zoom参加をご希望の方は、(事前登録フォーム)からお申し込み下さい(登録後にZoom会議のURLと会議ID,パスワードが届きます)。
※Zoomでの研究会の様子は録画します。
趣旨
2022〜2028年度に行う日琉語諸方言の保存研究と,日琉語諸方言のイントネーション研究プロジェクトの共同研究員による研究発表会です。プロジェクト2年目の第1回目の今回はイントネーションプロジェクト(五十嵐陽介)によるワークショップおよびプロジェクトの共同研究員による音声,文法,言語復興に関する様々な研究発表を行います。
問い合わせ先
h-oshima [at] ninjal.ac.jp ([at]を@に変えてください)

参加費無料・(Zoom参加に限り)事前申込必要

プログラム

  • 「日琉諸語の韻律体系におけるculminativityとobligatoriness」

    五十嵐 陽介(国立国語研究所)

     日琉諸語の韻律体系は多様性に富む。この多様性は,韻律研究一般,特に類型論的研究の発展に大きく貢献するはずである。しかしながら,世界の言語を対象とした韻律の類型論的研究では,日本語標準変種以外の日琉諸語の体系が議論の俎上に上ることはほとんどない。この不幸な状況を生んだ原因を言語の壁,すなわち日琉諸語の韻律体系を扱う論文の多くが日本語で書かれているという事実に求めるのは困難である。むしろ,日琉諸語を専門としない研究者による日琉諸語の体系の理解を阻害してきたのは,日本の韻律研究者によって使用される特異な概念や枠組みである。日琉諸語の韻律体系に関する知見が世界中の研究者に広く共有されるためには,一般的に受け入れられている枠組みを用いて日琉諸語を記述する必要がある。本ワークショップではHymanによる世界中の言語を対象とした韻律類型論で用いられている類型論的パラメータ,culminativityとobligatorinessを取り上げ,これを日琉諸語の記述に適用する際に生じる諸問題を論じることを目的とする。


     質疑応答

     セリック・ケナン氏,平子達也氏,青井隼人氏によるコメントおよびディスカッション
  • 昼休み

  • 「北琉球沖縄語伊平屋方言のアクセント体系を考え直す」

    サルバトーレ・カルリノ(大東文化大学)

     本発表では発表者の今までの伊平屋方言のアクセント体系の記述の問題点について考え直し,新しいデータに基づいてより精密な記述を提案する。

  • 「八重山語小浜方言の3型のアクセント体系について」

    セリック・ケナン(国立国語研究所) 麻生 玲子(名桜大学)

     本発表では,南琉球八重山語小浜方言のアクセント体系に関する調査結果を報告する。第一に,複合名詞が3つの異なる音調が区別されることを示した松森(2015)に続き,単純名詞も3つのアクセント型が区別されることを示す。第二に,各アクセント型の実現を環境ごとに記述し、その音韻的解釈に関する草案を提示する。最後に,系統的に近い古見方言と宮良方言も取り上げ,これらの方言における単純名詞のアクセント体系について簡単に検討する。

  • 休憩

  • 「宮古語諸方言での名詞句階層でみる複数性表現に関する予備的調査報告」

    大島 一(国立国語研究所) セリック・ケナン(国立国語研究所)

     本発表では宮古語諸方言の名詞の複数形式について実施した予備的な調査結果を報告する。まず,宮古語諸方言では呼称形・非呼称形(=ガ・ノ交代)による二つの形式が用いられるが,複数形式とそれらの複数形式の名詞への付き方は諸方言により多様であることが観察された。また,日本語共通語ではふつう非ヒト名詞に複数形式は付けられないが,宮古語諸方言では(他いくつかの本土諸方言同様に)非ヒト名詞にも複数形式の付加が可能であり,かつ,地点によってその付けられ方は多様である。この理由について,当該現象には様々な要因が関与すると考えられ,これらの要因について整理する。

  • 「衰退・消滅の危機にある静岡井川方言の現状とその再活性化」

    谷口 ジョイ(静岡工科大学)

     本発表は,衰退・消滅の危機にある静岡・井川方言の現状について報告するものである。大井川最上流域に位置する旧井川村(現在の静岡市葵区井川)は,険しい山や渓谷に阻まれ,長く周辺地域から隔絶されていた。旧井川村で用いられる井川方言は,中部方言で唯一,無アクセントであるなど,周辺とは異なるさまざまな言語的特徴が見られるが,その話者は激減している。本発表では,54名の井川方言話者を対象とした個人面接法による調査に基づき,井川方言に特徴的なアクセント,語彙,表現という観点から,方言衰退の様態を可視化する。また,2022年度には,「言語の多様性に関する啓蒙・教育プロジェクト(日本言語学会)」において,①井川方言の音声・動画コンテンツをインターネット上で公開,②井川方言を紹介する子ども向け冊子を作成・配布,③井川地域の住民を対象としたシンポジウムの開催,といった活動を行った。こうした井川方言の継承や再活性化の重要性を伝える活動についても紹介する。

令和4年度 第2回「危機言語の保存と日琉諸語のプロソディー」合同研究発表会

開催日時
2022年12月4日 (日) 9:00~16:00
Web開催
Zoom参加(質疑参加希望者)もしくはYouTube Live配信(視聴のみ)
※Zoom参加をご希望の方は、(事前登録フォーム)からお申し込み下さい。Zoom会議のURLと会議ID、パスワードを後日お送りいたします。
※研究会の様子は同時にYouTube Live(https://youtu.be/p0j6kz8mU7s)でも配信いたします。こちらはどなたでも視聴できます(視聴のみで質問は受け付けません)。
趣旨
2022〜2028年度に行う日琉語諸方言の保存研究と,日琉語諸方言のイントネーション研究プロジェクトの共同研究員による研究発表会です。第2回目の今回は両プロジェクトの共同研究員による音声,文法,さらにはデータベース構築や言語復興に関することなど,様々な研究発表を行います。
問い合わせ先
h-oshima [at] ninjal.ac.jp ([at]を@に変えてください)

参加費無料・(Zoom参加に限り)事前申込必要

プログラム

  • あいさつ

  • 「宮古語大神方言の強調辞tuの位置づけ」

    金田 章宏(千葉大学)

     八丈語の述語形式にみられる義務的な終助辞の位置づけを再検討し,それをふまえながら,宮古語大神方言の動詞述語形式にあらわれる強調辞tuの位置づけを考える。結論とまではいかないが,大神方言の強調辞tuを語形の一部とする考えを示す。

  • 「南琉球宮古語池間方言の疑問文イントネーション」

    五十嵐 陽介(国立国語研究所)

     Yes-no疑問文に上昇調のイントネーションが用いられる言語が世界の言語の圧倒的多数を占めることが知られているが,日琉諸語には,yes-no疑問文に上昇調の句末音調が用いられない方言が報告されており,そのような方言は東北地方,北陸地方,九州西南部,琉球列島に偏在しているという。しかしながら,琉球諸語の疑問文イントネーションに関する近年の研究成果を検討する限り,yes-no疑問文に上昇調が全く現れない琉球語諸方言は―もしあるとしても―少数であり,上昇調の不使用を基本としながらも,条件によっては上昇調が用いられる琉球語諸方言が多数を占めるように思われる。このことは,yes-no疑問文における上昇調の使用/不使用という二値パラメータによって諸方言を類型化することが不可能であることを示唆する。本研究では,疑問文イントネーションを二値パラメータによって類型化するために,形態統語論的疑問標識を欠く文がイントネーションによって疑問文と解釈されるいわゆる「平叙疑問文」(declarative question)の有無に基づいた類型論を提案する。南琉球宮古語池間方言を対象とした調査の結果,この方言は「平叙疑問文」を欠き,yes-no疑問文に上昇調が現れるときは必ず文末疑問標識を伴うことが明らかになった。

  • 休憩

  • 「北琉球奄美語与論島方言の対格標識=NcjaNと他動詞目的語名詞(句)の性格」

    宮川 創(国立国語研究所)

     北琉球諸語の与論島方言は,沖永良部島方言や沖縄本島北部方言,伊平屋島方言などの有標主格(・無標対格)型言語に地理的に挟まれていながら,対格標識=(i)NcjaN / =(i)Ncjaaを有する。発表者は,与論島方言での,明治28年から大正13年生まれの話者11人による38の昔話(しまがたり)が収録されている『与論のしまがたり』(菊千代著,はる書房,1985年出版)をデジタルコーパス化した。本発表では,その中で出てくる他動詞と他動詞目的語を抜き出し,対格標識の有無,目的語の定性・有生性を調べ,それらの相互関係について考察する。

  • 「学校での宮古語継承の課題に取り組む:「一日一語みゃーくふつ」の言語実践報告」

    藤田ラウンド 幸世(横浜市立大学)

     本発表は,沖縄県宮古島市で行った発表者の社会言語学調査の中の,学校教育に焦点を当てた研究の応用であり,現在進行中の教育実践の中間報告である。消滅危機言語の記録や言説に関わる研究はさまざまな研究者により進められているが,本研究ではどのように言語継承を具体化できるかという学校教育現場での宮古語継承の課題に取り組む。
     ニュースピーカーとなりうる子ども期の教育現場に言語実践を取り込みためには,どのような具体的な言語教育プログラムを提案できるのか。まず,事例研究として,宮古島市内の中学校で国語教諭と協働で「一日一語みゃーくふつ」プログラムを実践することにした。2022年4月時点での,コロナ禍における学校給食の「黙食」推進を受け,給食を食べる時間を利用した給食の校内放送に加える形で,給食に関わる語彙を給食のある日に一語紹介,練習する。図書館に自主発音レッスン用iPadを設置し,総合学習の時間での地域行事の講話など,学習につながる仕掛けも作り,一日一語をサポートする総合的な取り組みを展開している。
     時間割が厳密に決められた「学校」の中で,子どもたちの日々の生活の中にどのように言語実践を取り入れるか。バイリンガル教育の発想から「学校」を言語ドメインにするための言語実践の中間報告を行う。

  • お昼休み

    ※藤田ラウンド先生が宮古島で作成したドキュメンタリー映像(47分)を上映します。

  • 「熊本県の二型アクセントの音響分析:中南部3方言の比較から」

    山田 高明(一橋大学大学院博士後期課程)

     本発表では,フィールド調査によって得られたデータの音響分析の結果をもとに,熊本県内,とくに中南部地域の二型アクセントの音調実現について述べる。当該地域には,母音の広狭が音調実現に影響を与えるようなアクセント体系を持つ方言と,そうでないような方言が点在している。本発表では,そのうち,熊本県八代市坂本町平野方言(母音の広狭の影響が見られない方言)・熊本県八代市東町年の神方言(名詞単独形にのみ母音の広狭の影響が見られる方言)・熊本県八代郡氷川町野津方言(名詞にさまざまな助詞が付いた環境で母音の広狭の影響が見られる方言)の3方言を対象とし,その特徴について論じる。

  • 「日本語諸方言における最小語制約の類型化に向けて:九州方言を中心とした初期報告」

    松岡 葵(九州大学大学院博士後期課程)

     本発表の目的は,以下の2点である。
    (1) 福岡県柳川市方言と宮崎県椎葉村尾前方言における最小語制約に基づいた1モーラ名詞の母音延長の記述をおこなう。
    (2) 本発表による両方言の記述及び先行研究による他方言(熊本県熊本市方言など)の記述を踏まえ,1モーラ名詞の母音延長の生じ方に通方言的な階層性がある可能性を指摘する。

  • 休憩

  • 「日本の危機言語語彙データベース」

    セリック・ケナン(日本学術振興会特別研究員),籠宮 隆之(国立国語研究所),宮川 創(国立国語研究所),木部 暢子(人間文化研究機構)

     本発表では,琉球諸語のアクセント研究を視野に入れながら http://kikigengo.ninjal.ac.jp/data/tango/searchで新しくなった語彙データベースについて紹介・解説する。
     まず,検索のデモンストレーションを実施しながら,データベースの構造や機能について説明し,将来の拡大に関する企画についても述べる。その上で,琉球諸語のアクセント研究に関する動向とその課題について簡単に触れた後,本データベースがこれらの課題の解決に向けてどのように貢献できるかについて論じる。

  • 【共同研究員向け業務連絡】

文化庁「各地方言収集緊急調査」方言談話整備 共同プロジェクト 説明会&講習会

開催日時
2022年7月16日 (土) 13:00~16:00
共催
◆ 国立国語研究所 共同研究プロジェクト 「消滅危機言語の保存研究」
◆ 科研費基盤研究 (A) 「日本語諸方言コーパスによる方言音調の比較類型論的研究」
◆ 科研費基盤研究 (A) 「『全国方言文法辞典』データベースの拡充による日本語時空間変異対照研究の多角的展開」
趣旨
『日本のふるさとことば集成』、日本語諸方言コーパス (COJADS) の元データである、文化庁「各地方言収集緊急調査」方言談話データの整備作業を共同で行っていくプロジェクトを立ち上げました。下記のとおり、説明会&講習会を開催いたしますので、ふるってご参加ください。(参加費無料)。
問い合わせ先
fumiko [at] ninjal.ac.jp ([at]を@に変えてください)

プログラム

  • 第一部

  • 「データの全貌 ―総時間数およそ2,500時間 (うち公開データ80時間) の方言談話データのゆくえ―」

    井上 文子
  • 「データ整備の流れ ―COJADS 公開データができるまで―」

    木部 暢子、COJADS 班
  • 「データ共有のしくみ ―100年後の方言研究のために―」

    山田 真寛、日高 水穂
  • 第二部

  • 「データ整備・データ利用講習会」

令和4年度 第1回「危機言語の保存と日琉諸語のプロソディー」合同研究発表会

開催日時
2022年5月28日 (土) 10:00~16:00
Web開催
Zoom参加(質疑参加希望者)もしくはYouTube Live配信(視聴のみ)
※Zoom参加をご希望の方は、(事前登録フォーム)からお申し込み下さい。Zoom会議のURLと会議ID、パスワードを後日お送りいたします。
※研究会の様子は同時にYouTube Live(https://youtu.be/e47PYSDanNM)でも配信いたします。こちらはどなたでも視聴できます(視聴のみで質問は受け付けません)。
趣旨
2022〜2028年度に行う日琉語諸方言の保存研究と,日琉語諸方言のイントネーション研究プロジェクトの共同研究員による研究発表会です。第1回目の今回は両プロジェクトの紹介も兼ねて,いくつかのサブプロジェクトの中心となる共同研究員が研究発表を行います。
*科研費基盤研究 (B)「南琉球宮古諸方言のアクセントに関する調査研究」(代表:新田哲夫(金沢大学),課題番号:20H01259)との共同開催です。
問い合わせ先
h-oshima [at] ninjal.ac.jp ([at]を@に変えてください)

参加費無料・(Zoom参加に限り)事前申込必要

プログラム

  • プロジェクト「日琉諸語のプロソディー」について

    五十嵐 陽介(国立国語研究所)
  • 「宮古諸島における「韻律領域の拡張」と多良間島のプロソディー」

    松森 晶子(日本女子大学)

     五十嵐ほか(2012)における池間島の3型アクセント体系の発見を皮切りにして,(宮古島の与那覇,狩俣,上地や多良間島などの)宮古諸島の諸方言には,琉球祖語の3つの型の区別に対応する3種類の型が,明瞭に区別される韻律体系が存在することが明らかになってきている。そして現在,それら3型体系の仕組みの多様性がどのようにして生じてきたかについての考察も,活発に成され始めている。  
     本発表では,これら先行研究における記述結果や多良間島の調査データを使用しながら,まず,宮古諸島のプロソディー体系の基本音調をL*Hと設定する提案を行う。またこの宮古地域には「韻律領域の拡張」(窪薗 2021:256)が広範囲にわたって生じた(ている)可能性があること,そして多良間島においては,その基本音調L*Hの最後のH音調は原則的に韻律句のレベルではじめて出現することを論じる。さらに本発表では,これまで「無核型」と記述されてきた多良間島のA型は,実は(最大)3つ目の韻律語(あるいは韻律句)に核を持つ「有核型」である可能性があり,その特徴も原則的に韻律句レベルにおいてはじめて実現するものであることも,あわせて論じる。  
     最後に,今後の宮古諸島のプロソディー研究において,我々が特に焦点を置いて調査・記述すべき課題について論じる。

  • 「八重山語小浜方言の中舌母音の摩擦音化について」

    クリストファー・デイビス(琉球大学)

     八重山語における中舌母音が音声上で摩擦音 [s] または [z] のような音を伴って発音されることがよく観察される現象である。小浜方言では,母音と子音の無声化のため,音声上では中舌母音そのものの存在が確かめにくいが,それに伴う摩擦音 [s] が観察されることが多い。そこで可能性として,(1)その摩擦音[s]が無声化した中舌母音に伴うものとして分析するか,(2)中舌母音そのものが通時的に摩擦音と変化してきて,共時的にその[s]が独立した子音であると分析するか,といった二つの分析が可能である。後者の分析を裏付ける証拠となるデータを提供し論じる。

  • 休憩

  • プロジェクト「危機言語の保存」について

    山田 真寛(国立国語研究所)
  • 報告「新しい危機言語DBについて」

    セリック・ケナン(国立国語研究所)

     このプレゼンテーションでは前年度にリニューアルした危機言語データベースを紹介する。新しいDBでは,刷新された語彙システムにより,日琉諸語に特化した複雑な語彙編集と公開が可能となった。このデモンストレーションとともに,今期のプロジェクトの語彙編集の可能性について述べる。

  • 「Omeka Sを用いた日本の危機方言のためのデジタルアーカイブの構築:デジタルヒューマニティーズにおける世界標準(TEI・IIIF・ダブリンコア)の適用」

    宮川 創(国立国語研究所)

     本発表では,現在デジタルヒューマニティーズにおいて世界標準となっている形式や枠組みを効果的に用いた,日本の危機方言のためのデジタルアーカイブの構築について論じる。まず,文字資料のテキスト構造化の世界標準となっているTEI,画像資料の相互利用枠組みの世界標準となっているIIIF,および,メタデータの標準であるダブリンコアの歴史と現在の動向について説明する。この際,『日本言語地図』等,方言関連地図をどのようにIIIFを用いて表示させるかや,方言のグロス付き資料や辞書をどのようにTEIでマークアップするかを論じる。その後,米国ジョージ・メイソン大学ロイ・ローゼンツヴァイク・歴史・ニューメディアセンター(CHNM)が提供しているCMS(コンテンツ管理システム)であるOmeka Sを使用した,現在構築中の,日本の危機方言関連資料のデジタルアーカイブについて議論する。このOmeka Sを用いると,TEI,IIIF,ダブリンコアなどの世界標準を用いたデジタルアーカイブを,複数人で共同で効率的に開発することができる。

  • 昼休み

  • 「琉球諸語における除括性(clusivity)の類型的特徴と通時変化」

    下地 理則(九州大学)

     本発表では,琉球諸語の記述研究で長く注目されてきた類型特徴である除括性(「私たち」における除外・包括の区別)に関して,その膨大な研究史を概観するとともに,現時点で確認されている共時バリエーション,通言語的にみた場合の類型論的特徴,通時変化のシナリオについて議論する。特に,除外・包括の区別が消滅する過程にあるいくつかの方言に着目しながら,除外形が包括形を追い出す形でその区別が消滅するパターンが琉球諸語には顕著であることを示す。これは,除括性の類型論で提案されている一般化「除外・包括の区別の消滅に際しては,ほとんどの場合,包括形が拡張されて除外形が消滅する」(Filimonova 2005のGeneralization 13)に対する反例であり,琉球諸語の除括性の研究が類型論に対してもたらす貢献が大きいことを確認する。

  • 「命令表現における文末音調の記述 ―愛媛県松山市方言を事例に―」

    久保 博雅(広島経済大学)

     本発表では,愛媛県松山市方言における命令表現(命令形命令,連用形命令,テ形命令など)について,各形式が伴う文末音調に焦点を当て,その記述と,音調が命令表現の発話機能にもたらすはたらきについての分析を述べる。なお,本発表における「文末音調」には,上昇・下降のほか,終助詞が後接する際のピッチも含める。

  • 「新しい話者のための言語継承アプローチ:第二言語習得理論から琉球諸語の継承を考える」

    ズラズリ 美穂(ロンドン大学東洋アフリカ研究学院博士課程),半嶺 まどか(名桜大学)

     琉球諸語は伝統的に琉球諸島で話されている日本語の姉妹言語であるが,過去半世紀の間に琉球諸語の世代間継承が急速に衰退したことに伴い,世代間の記憶の断絶に伴うアイデンティティの混乱もしくは存在不安が若い世代に影を落としている。また,琉球諸語の再活性化に取り組む研究者や活動家が増えているにもかかわらず,琉球諸語を継承言語として学ぶ新しい話者が必要としている支援体制はまだ万全とはいえない。本発表では,現在,我々が様々な分野の研究者や活動家,話者,学習者を対象に実施しているインタビュー調査の中間所見に基づいて,今後,新しい話者を支援するための学際的連携を実現するうえで考慮すべき課題と,学習者の言語習得過程とアイデンティティ,感情,言語態度の変化について考察する。

令和3年度 第2回「日本の消滅危機言語・方言の記録とドキュメンテーションの作成」オンライン研究発表会

開催日時
2021年12月12日 (日) 10:30~16:20
Web開催
Zoom参加(質疑参加希望者)もしくはYouTube Live配信(視聴のみ)
※Zoom参加をご希望の方は、(事前登録フォーム)からお申し込み下さい。Zoom会議のURLと会議ID、パスワードを後日お送りいたします。
※研究会の様子は同時にYouTube Live(https://youtu.be/mXNEtxLRVlA)でも配信いたします。こちらはどなたでも視聴できます(視聴のみで質問は受け付けません)。
趣旨
本プロジェクトでは、日本の消滅危機言語・方言の文法記述のために毎年テーマを設けて研究発表会を開催してきましたが、このコロナ禍をうけ、今年度も当初予定していたテーマでの調査が困難な状況となりました。そこで、今回の研究発表会は、本プロジェクトの最終年度のまとめとして、これまでの調査から特に注目されるテーマについて共同研究員が自由に発表する会とすることにしました。研究会の最後には、6年間の締めくくりとして、改めて日本の消滅危機言語・方言の記録と継承の重要性を確認し、次の活動へつなげていく提案を行いたいと思います。なお、研究発表と質疑・応答はすべてオンラインで行います。
問い合わせ先
h-oshima [at] ninjal.ac.jp ([at]を@に変えてください)

参加費無料・(Zoom参加に限り)事前申込必要

プログラム

  • 挨拶

  • 「長崎県藪路木島方言における助詞「ぞ」についての初期報告」

    原田 走一郎(長崎大学)

    長崎県藪路木島方言には、以下に示すような助詞「ぞ」がある。
    (1)おれあそこでぞ滑っち、こげんなケガばした「俺はあそこで滑って、こんなケガをした」
    (2)分かっちょっちぞ、おそゆる「分かっていたなら、教えているさ」
    本発表では、この助詞「ぞ」がどのような環境に生起しうるかを整理する。

  • 「琉球諸語の焦点助詞の機能」

    狩俣繁久(琉球大学)

    琉球諸語には係助詞があり、文末述語との間にある支配・被支配の関係(係り結び)が活きているという見解があったが、狩俣(2011)は、琉球諸語の沖縄語今帰仁謝名方言のdu、ga、kuse:、沖縄語那覇方言のdu、ga、宮古語下里方言のdu、ga、nu、八重山語石垣方言のduを検討し、琉球諸語には係り結びが無いこと、係助詞の機能が焦点化なら、これを焦点助詞と呼ぶべきことを論じた。文の最も重要なモダリティを表す述語の形式を焦点助詞は支配せず、逆に複数の焦点助詞があるとき、どれが現れるかはモーダルな文のタイプが決めていることを述べた。狩俣(2019)は焦点助詞duをとりたて表現の中に位置づけ、特立を表すことを述べた。狩俣(2020)は、duが文中の何・どこに焦点を当てるかをモーダルな文のタイプごとに述べた。本発表では焦点助詞をとりたて表現の一つの形式と見たとき、どんな機能を果たすのか、どういう状況で現れるかを沖縄語伊江島方言、名護市久志方言、宮古語西里方言等の調査資料に基づいて論ずる。

  • 昼休み

  • 「琉球諸語の使役文」

    當山 奈那(琉球大学)

    琉球諸語の使役文は、形態論的な特徴として、ス形式とシム形式を持つ方言、ス形式のみを持つ方言、シム形式のみをもつ方言がある。また、構文論的な特徴として、間接使役文(二重使役文)を持つ方言と持たない方言とがある。間接使役文を持つ方言では、その作り方にス形式によって間接使役文を作るか、シム形式によって間接使役文を作るかという違いがみられる。本報告では、上記について、琉球諸語のいくつかの方言を取り上げて示し、間接使役文とス形式、シム形式の関係についても考察する。

  • 「宮古語大神方言 動作や変化の局面に関わる諸形式」

    金田 章宏(千葉大学)

    宮古語大神方言には、動作や変化の開始の局面、持続の局面、終了の局面などにいくつもの文法形式や補助的な単語が用意されている。この発表ではそれらの整理をおこない、局面にかかわる表現形式の全体を確認する。おもなものは、kumata、kata、kami、ku:kam、m:ti:uL、などである。

  • 休憩

  • 「『どぅなんむぬい辞典』に見られる現在の与那国方言の諸特徴」

    中澤 光平(東京大学)

    本発表では、『どぅなんむぬい辞典』の例文をもとに、現在の与那国方言の特徴についてまとめる。具体的には、次のような点について述べる。
    ・「どぅ」の非焦点マーカー化
    ・「てぃ」の非継起接辞化
    ・係り結びと無関係な連体形の終止用法
    また、これらの特徴の一部は、少なくとも最近生じたものではない可能性があることを、COJADSのデータをもとに示す。

  • 「琉球諸語における除括性(clusivity)―調査票の提案と今後の展望」

    下地 理則(九州大学)

    本発表では、琉球諸語における除括性(clusivity)、すなわち1人称非単数代名詞における除外と包括の対立に焦点を当て、除括性に関する類型的一般特徴に照らしながら、琉球諸語のデータが提示する問題点を議論するとともに、関連すると考えられる諸要因を変数とした調査票を提案する。言語類型論において、除括性に関して3つの主要なパターンが確認される一方(Type 1-3)、Type 4は存在が報告されていない(Cysouw 2005, Bickel and Nichols 2005)。

    Type 1: 除外・包括の区別なし
    Type 2: 除外と包括にそれぞれ特化した形式が存在する
    Type 3: 包括に特化した形式だけが存在する
    *Type 4: 除外に特化した形式だけが存在する

    琉球諸語20言語のデータをもとにすると、Type 1-3のいずれも存在することが確認された。本発表ではさらに、上記タイプのいずれにも分類できない新たな方言の存在を報告する。沖縄語北部方言(今帰仁村、瀬底島の諸方言など)の1人称複数「私たち」にはワッター系とアガ系の2系列あることが知られており、ワッター系は聞き⼿を含まない除外形、アガ系は聞き⼿を含む包括形であるというのが定説である(内間1979ほか多数)。ところが、現在発表者が進めている調査により、今帰仁村謝名方言はこの定説によっては説明できない体系を持ち、かつこれまで類型論で知られている除外・包括のいかなる体系とも異なることが明らかとなった。本発表では、現時点で得られている限られた調査データをもとに、この方言の体系の類型的位置付けも議論してみたい。

  • 総括のことば

    木部 暢子(国立国語研究所)

令和3年度 第1回「日本の消滅危機言語・方言の記録とドキュメンテーションの作成」オンライン研究発表会「格と形容詞」

開催日時
2021年6月13日 (日) 10:30~16:20
Web開催
Zoom参加(質疑参加希望者)もしくはYouTube Live配信(視聴のみ)
※Zoom参加をご希望の方は、(事前登録フォーム)からお申し込み下さい。Zoom会議のURLと会議ID、パスワードを後日お送りいたします。
※研究会の様子は同時にYouTube Live(https://youtu.be/w8yr3qZO0fU)でも配信いたします。こちらはどなたでも視聴できます(視聴のみで質問は受け付けません)。
趣旨
本プロジェクトでは、日本の消滅危機言語・方言の文法記述のために毎年テーマを設けて研究発表会を開催していますが、このコロナ禍をうけ、今年度も当初予定していたテーマでの調査が困難な状況となりました。そこで、各発表者が希望する発表をまとめて、「格と形容詞」に注目した研究発表を行うことにしました。研究発表と質疑・応答はすべてオンラインで行います。
問い合わせ先
h-oshima [at] ninjal.ac.jp ([at]を@に変えてください)

参加費無料・(Zoom参加に限り)事前申込必要

プログラム

  • 挨拶

  • 「福岡県柳川市方言における Property Concept を表す語の品詞論:動詞との形態統語的な相違点に着目して」

    松岡 葵(九州大学大学院博士後期課程)

    本発表は、福岡県柳川市方言における Property Concept を表す語(例:hayaka「早い」、hayakatta「早かった」)の品詞的ステータスについて、形態論・統語面の両側面から考察する。Property Concept(Thompson 1988)を表す語(以下、PC語)とは、 物事の性質を表す語であり、その品詞的ステータス(動詞の下位類か、名詞の下位類か、別個の品詞か)は言語を記述する上で重要なトピックとなる。
    一部の九州方言は、一般にカ語尾と呼ばれるふるまいを示し、PC語は多くの活用形で hayaka 「早い」のように ka という要素を含む。ka は、通時的には接辞 -ku と動詞 ari「ある」に由来し、九州方言の研究では ka 及び ka を含む要素を屈折形容詞のとる屈折接辞とする分析と、 ka を動詞派生接辞とする分析の両方がなされている。本発表では、形態論・統語論の両側面において柳川方言におけるPC語が動詞とは異なるふるまいを示すことを示し、屈折形容詞という個別の品詞を認めるほうが記述上のメリットが大きいと主張する。

  • 「宮古語大神方言 形容詞重複形の機能を中心に」

    金田章宏(千葉大学)

    宮古語大神方言の形容詞の重複形をふくむ形式が文の成分としてどのようなふるまいをするのかを整理する。
    重複形は語形としては基本的にこれ以上変化することはなく(連体格が~nuになるのみ)、ひとつの語形がさまざまな機能で使用される。その点で、日本語の形容詞が機能によって「しずかだ=終止形」「しずかな=連体形」「しずかに=中止形」と変化するのとは異なる。
    重複形はそのままで、またはコピュラや補助動詞uɿ/aɿとともに、述語に使用される。また、いくつかの組み合わせパタンのなかで、連体格~nuの形で規定語=連体修飾語に使用される。さらに、文中で中止的に使用され、 二股述語文の先行述語や述語動詞を飾る修飾語(どんなふうに)などに使用される。
    このように形容詞の重複形およびこれをもとにした形式は、単純語幹の形容詞のパラダイムほど豊かではないにしても、文中での基本的な機能を果たすといえる。
    (機能:文における切れ続き=終止・連体・連用)

  • 昼休み

  • 「福岡今津方言の格助詞ととりたて性」

    荻野千砂子(福岡教育大学)・三苫麻里(福岡中央美術)

    本発表では、2018年に録音した今津地域の談話を元に、格助詞の形式と用法について述べる。また、併せてとりたて性をもつ助詞についても概要を整理する。
    主格は =ノが主に用いられるが、=ガも用いられ、一人称代名詞で主格を表す「わ=ガ」は一語化している。「あたき(一人称代名詞)=ガ」の音声形はatak=kaともなる(博多方言ではatag=ga)。属格は=ノを用いるが、「わ=ガ」は属格の用法も持つ。また、対格、場所格、方向格、引用格に=φ(無助詞)が見られるため、=φとなる文タイプを整理する。その際、助詞が表示されると有標となり、とりたて性が生じる可能性を触れる。

  • 「熊本県八代市方言の格:初期報告」

    山田高明(一橋大学大学院博士課程/国立国語研究所)

    本発表では、エリシテーション調査および談話資料から得られたデータに基づき、熊本県八代市方言の格標識について報告する。

  • 休憩

  • 「徳之島伊仙方言の与格」

    加藤幹治(日本学術振興会特別研究員/東京外国語大学)

    伊仙方言の与格の用法を整理すると共に、これまで提唱されてきた与格のSemantic map(cf. Haspelmath 2013)を改訂する。

  • ディスカッション

令和2年度 第2回研究発表会「日本の消滅危機言語・方言の記録とドキュメンテーションの作成」オンライン研究発表会

開催日時
2021年3月14日 (日) 10:30~16:00
Web開催
WEB開催(Zoom 参加及び YouTube Live 配信)
※Zoom参加をご希望の方は、事前登録フォームからお申し込み下さい。Zoom会議のURLと会議ID、パスワードを後日お送りいたします。
※研究会の様子は同時に YouTube Live(https://youtu.be/4DQYsc3bHQA)でも配信いたします。こちらはどなたでも視聴できます(視聴のみで質問は受け付けません)。
趣旨
本プロジェクトでは、日本の消滅危機言語・方言の文法記述のために毎年テーマを設けて研究発表会を開催していますが、このコロナ禍をうけ、今年度は当初予定していたテーマでの調査が困難な状況となりました。そこで、今年度第2回研究発表会は特にテーマを設けず、各発表者がこれまでの調査の中から自由なテーマで研究発表を行うことにしました。研究発表と質疑・応答はすべてオンラインで行います。
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プログラム

  • 挨拶

  • 「北琉球沖永良部国頭方言の焦点標識」

    横山 晶子(日本学術振興会特別研究員/東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)

    本発表は、北琉球沖永良部国頭方言において、焦点助詞(=ga, =du)と、焦点呼応形式(-ru)が現れる環境を分析する。
    まず、自然談話資料において、焦点助詞と結び形-ruの共起関係を調べ、両者の間に一方が他方の出現を統制するような呼応関係がないことを述べる。
    次いで、自然談話資料で各形式が現れた文節を調べ、各形式が現れやすい文のタイプ、節のタイプ、焦点タイプを整理する。
    最後に、自然談話資料で観察された傾向を、エリシテーションによって確認した結果を報告する。

  • 「北琉球硫黄鳥島方言の埋め込み疑問文」

    ハイス・ファン=デル=ルべ(日本学術振興会外国人特別研究員/沖縄国際大学)

    本発表では、沖縄県久米島町字鳥島で話されている方言を対象とし、発表者が現地調査で得たデータをもとに埋め込み疑問文ついて記述する。 北琉球諸語において、埋め込み疑問文の焦点助詞gaに、いわゆる‘係り結び構造’が用いられることが指摘されてきた。 鳥島方言における埋め込み疑問文においても焦点助詞gaによる構造が現れるが、それと異なる構造も見られる。

  • 昼休み

  • 「久米島具志川方言の格ととりたて〈素描〉」

    仲原 穣(琉球大学)

    北琉球諸語の一つである沖縄語久米島・具志川方言について報告する。 まず、当該方言について概況と特徴について述べる。次に久米島・具志川方言の格ととりたてについて、現時点までの調査で得た資料から得られたデータを元にし、機能や用法について例文を示して記述する。

  • 「多良間方言の韻律構造:韻律語の再定義の試み」

    セリック・ケナン(国立国語研究所)

    本発表では、多良間方言の韻律構造における「韻律語」という韻律的単位の再定義を試みる。 韻律語は多良間方言のアクセント体系を正しく記述するために導入された韻律的範疇である。 従来の研究では、「2拍以上の語根/接語によって形成される」のように、語根(または、接辞や1拍接語が付いた語根)の「上」の単位として定義されてきた。 しかし、この定義に反する例が数多く見られており、採用されてきた定義が実際に妥当かどうかについては議論の余地が残る。 本発表では、新しい調査データを加えながら、韻律語を語根の「下」の単位として位置付ける新しい分析を提案する。 さらに、韻律語の形成がポストレキシカル的な規則によって決まるのではなく、語彙的に指定されていることを示すデータを提示する。

  • 休憩

  • ディスカッション

令和2年度 第1回研究発表会「格・情報構造(本土諸方言)」(オンライン開催)

開催日時
2020年6月14日 (日) 10:30~15:00
Web開催
WEB開催(Zoom参加及びYouTube Live配信)
※Zoom 参加をご希望の方は、大島一 h-oshima[at]ninjal.ac.jp にメールでお名前と(あれば))ご所属をお送りください。Web会議のurlと会議ID、パスワードを当日お送りいたします。
※研究会の様子は同時に YouTube Live(https://youtu.be/HdhZ2pqN514)でも配信いたします。こちらはどなたでも視聴できます(視聴のみで質問は受け付けません)。
趣旨
本プロジェクトでは、日本の消滅危機言語・方言の文法記述のために毎年テーマを設けて研究発表会を開催している。今年度第1回研究発表会では昨年度3月に開催予定だった本土諸方言における格と情報構造の各発表者による記述調査研究をオンライン研究会にて議論する。
問い合わせ先
h-oshima [at] ninjal.ac.jp ([at]を@に変えてください)

参加費無料・(Zoom参加に限り)事前申込必要

プログラム

  • 挨拶

  • 「八丈語の格・情報構造:形容詞構文における与格交替」

    三樹 陽介(駒澤大学)

    八丈語の格と情報構造について概観し、特に、形容詞二項述語文における与格交替(形容詞に先行するガ格(主格)がニ格(与格)と交替し、形容詞項にニ格を伴う)の成立条件や階層性について報告する。
    下地理則ほか(2018)では、宮崎県椎葉村尾前方言を例に、与格交替が他動形容詞文に現れ、意味役割・形容詞述語・心的影響に階層があることが指摘されている。八丈語末吉方言では他動形容詞文の心情形容詞と感情形容詞のうち、ネガティヴな意味を持つ形容詞文においてのみ与格交替が成立し、暫定二重主語文や、ポジティヴな意味を持つ他動形容詞では成立しない。以上は下地理則ほか(2018)で示された階層に違反しない。
    末吉方言の場合、必ず第二項から第一項への刺激があることが成立の条件であり、その刺激を発話者が認識していることが与格交替成立に大きく影響を与えている。そのため、暫定二重主語文では与格交替が成立せず、また、他動形容詞であってもポジティヴなものは刺激の認識が弱いため成立しにくいものと考える。以上を臨地調査で得たデータを基に考察する。

  • 「千葉県南房総市三芳方言の格」

    佐々木 冠(立命館大学)

    千葉県南房総市の方言の格形態法は文法関係の意味役割のコード化と名詞句階層の反映の2点で特徴的である。この方言では標準語ではともに「に」で表される複他動詞文の受け手と心理述語文の経験者が形式上区別される。受け手をマークする与格格助詞(=geaa)は、ホストの名詞が名詞句階層上の有生の極から離れると位格(=ni)や方位格(=sa)に置き換えられる傾向がある。名詞句階層は格形態素の独立性を左右する要因でもある。所有格およびそれと語源的に関連する格形態素は代名詞と組み合わされる際、独立性のない拘束形式に後接する接尾辞となり、名詞と組み合わされる際には独立性の高い助詞となる。本発表では調査で得たデータをもとにこれらの現象について解説する。

  • 「山梨県奈良田方言の格・情報構造:属格ノ・ガの用法を中心に」

    小西いずみ(東京大学)、三樹陽介(駒澤大学)、吉田雅子(実践女子大学)

    奈良田方言の格と情報構造について概観し、特に属格について詳しく報告する。奈良田方言には属格としてノとガがあるが、ガはN1(修飾名詞)が人称代名詞と親族名詞の場合に限られる。しかも、2人称代名詞のうちワレは可だがオイシは不可、親族名詞のうち兄・姉は可だが父・母は不可など、同じ階層内でも差がある。また、N1とN2(被修飾名詞句)の意味関係も、N1が1人称代名詞オレの場合はほぼ制限がないが、兄・姉では所有関係以外では許容されにくい。発表では、他方言とも対照しながらこうしたガの分布について考察する。

  • 昼休み

  • 「福井県嶺北方言における目的語標示」

    松倉 昂平(日本学術振興会特別研究員/金沢大学)

    福井県嶺北地方(福井県北東部)において他動詞の目的語は=Ø(無助詞)または=オで表される。本発表では、両形式の使い分けにどのような要因が関与するかを明らかにすべく、名詞句の人称、焦点の有無、述語からの距離などの観点からデータの分析を行う。
    分析対象とするデータは、発表者が福井県坂井市と今立郡池田町で収集した談話音声等のデータと、文化庁による各地方言収集緊急調査の録音資料(1983年に現あわら市で収録)である。

  • 「出雲方言の格と情報構造」

    平子 達也(南山大学)

    島根県出雲地域で話される出雲方言の格について、臨地調査の結果に基づいて、これまでに明らかになったことを述べる。特に、格助詞=ga/=no及び=oを中心に扱う。まず=gaと=noについて、それらが主語を標示する場合と連体修飾関係を表す場合とに分け、両者の分布が、格助詞が後接する名詞句の有生性階層上の位置とその名詞句によって表されるものに対する話者の敬意の有無によって説明できることを述べる。=oについては、それが他動詞目的語を標示するのに現れる場合があることを示した上で、目的語が格助詞を伴わない場合との差異について、主語名詞句と目的語名詞句の関係や、情報構造の観点から整理した結果を述べる。一部、イントネーション(句音調)との関係についても触れる。

  • ディスカッション

手話言語に関する講演会

開催日時
2019年8月3日 (土) 10:00~12:00
開催場所
国立国語研究所 2F 多目的室 (東京都立川市緑町10-2)
開催趣旨
今年の夏に、認知言語学的な手話研究の第一人者であるシャーマン・ウィルコックス教授が再来日されます。手話言語に特徴的な空間を使用した参照の仕組み(指さし、動詞の一致など)について講演していただきます。
使用言語
英語(日本手話通訳あり)
問い合わせ先
yufuko.takashima [at] gmail.com ([at]を@に変えてください)

参加費無料・事前申込不要(どなたでも参加可能)

プログラム

  • 「手話の談話における指示と空間使用」

    シャーマン・ウィルコックス教授(ニューメキシコ大学)

    Pointing and Placing in Signed Language Discourse

    Prof. Sherman Wilcox (University of New Mexico)

    本講義では、手話言語にどのように言語理論を適用するかについて概観する。主に、手話の文法構造における意味的な空間使用を扱う。指さしは、単純な形態素、あるいは非言語要素(ジェスチャー)として分析されることが多かった。これに対し、本講義では指さしを記号論的に複雑な「構文」と見なすことを提案し、複数の手話言語で例示する。また、手話に特徴的な空間使用であるplacing構文(※空間を利用した一致現象)について提示し、その2種の構文について説明する。これらをまとめ、談話の中で指さしとplacing構文がどのように現れるのか、とくに、空間上の位置を利用して指示対象を同定することや、空間内での動詞の一致という手話特有の現象について、理論をどのように適用できるか、検討する。

    In this lecture I will present an overview of the application of linguistic theory to the study of signed languages. The general topic is the semantic use of space in grammatical constructions. Often, pointing is analyzed in signed languages as simple morphemes or even as non-linguistic gesture. An approach to pointing as a symbolically complex construction will be presented and exemplified with data from signed languages. Another grammatical construction unique to signed languages, placing, will be described and discussed, and two types of placing constructions will be demonstrated. Finally, the application of pointing and placing to discourse will be examined with special attention to tracking referents and the use of these grammatical constructions in the unique, spatial form of verb agreement in signed languages.

2019年度 第1回研究発表会 「格・情報構造 (琉球諸語)」

開催日時
2019年6月16日 (日) 9:30~16:00
開催場所
国立国語研究所 2F 講堂 (東京都立川市緑町10-2)
趣旨
本プロジェクトでは、日本の消滅危機言語・方言の文法記述のために毎年テーマを設けて研究発表会を開催している。 今年度のテーマは「格・情報構造」である。今年度第1回研究発表会では琉球諸語における格と情報構造の各発表者による記述調査研究を議論する。
問い合わせ先
h-oshima [at] ninjal.ac.jp([at]を@に変えてください)

参加費無料・事前申込不要(どなたでも参加可能)

プログラム

  • 受付

  • 「南琉球八重山語西表島船浮方言における焦点標識の使用」

    占部 由子 (九州大学大学院 博士課程)

    本発表では、船浮方言の焦点標識の使用について、観察事実と分析を述べる。船浮方言は、焦点標識の出現に特に制限のない方言とされ、実際に面接調査で得られるデータでは頻繁に焦点標識が観察される。しかし、自然談話では焦点標識の出現頻度は低い。本発表では自然談話において、述部に焦点があたることがデフォルトであるという予測があり、この予測に従う場合には焦点標示が不要であると分析する。

  • 「琉球八重山諸方言の主格標示と特定性」

    中川 奈津子 (国立国語研究所)

    本発表では、聞き取り調査とコーパスのデータをもとに、八重山諸方言 (白保、真栄里、竹富) の自動詞主語の格標示の振る舞いを調べた結果を報告する。八重山諸方言では =ga と =nu の区別が失われたが、それでも九州の方言や他の琉球諸語のように特定性 (いわゆる有生性階層) にしたがって =nu と無標識の区別が行われていることを示す。また、八重山諸方言では =ga が失われて無標識になったために類型論的に珍しい格標示体系となっていることも議論する。

  • 休憩

  • 「沖縄県うるま市津堅方言の格」

    又吉 里美 (岡山大学)

    本発表では、沖縄県うるま市に位置する津堅島の方言の格について、調査結果の報告を以下の内容を中心におこなう。津堅方言の主格標示には ga と nu の二つが認められ、その出現のあり方について述べる。続いて、津堅方言の格タイプは、基本的には、他動詞主語と自動詞主語が同じ格 (=主格) で示され、他動詞目的語は無標となる「主格対格型 (有標主格) 」であることを確認する。特に、「主格対格型 (有標主格) 」として位置づけられることを、調査票による調査データ、談話資料のデータをもとに格標示のあり方とともに示す。また、有生性や語順などと格標示との関連についての分析考察を述べる。

  • 昼休み

  • 「北琉球沖縄語伊平屋方言の情報構造」

    サルバトーレ・カルリノ (国立国語研究所 / 一橋大学大学院 博士課程)

    本発表ではエリシテーションによって得られたデータと談話データに基づき、北琉球沖縄語伊平屋方言の情報構造について報告する。

  • 「与論方言の格=とりたてについて」

    當山 奈那 (琉球大学)

    本報告では、国頭語に属する与論方言の格=とりたて形式を含む文について、情報構造も含めた観点から分析・記述を行う。

  • 休憩

  • 「北琉球奄美大島方言の格標識について ―龍郷町浦方言を中心に―」

    重野 裕美 (広島経済大学)

    本発表では龍郷町浦方言を中心に奄美大島方言の格標識を概観する。特に、主格 (ga/nu/Ø)、対格 (ba/Ø) の分布について名詞の種類、述語の種類、情報構造の観点から検討する。

  • ディスカッション

  • 事務連絡

2018年度 第2回研究発表会 「動詞・形容詞 (本土諸方言) 」

開催日時
2018年3月10日 (日) 10:00~16:00
開催場所
国立国語研究所 2F 講堂 (東京都立川市緑町10-2)
趣旨
本プロジェクトでは、日本の消滅危機言語・方言の文法記述のために毎年テーマを設けて研究発表会を開催している。今年度のテーマは「動詞・形容詞」である。今年度第2回研究発表会では、本土諸方言における動詞・形容詞の各発表者による記述調査研究を議論するとともに、日本手話の動詞・形容詞についても議論することで、従来の動詞・形容詞研究を超えた研究成果を獲得する。
問い合わせ先
h-oshima [at] ninjal.ac.jp([at]を@に変えてください)

参加費無料・事前申込不要(どなたでも参加可能)

プログラム

  • 開会の挨拶

  • 「津軽方言の動詞・形容詞」

    大槻 知世 (国立国語研究所)

    本発表では、津軽方言の動詞・形容詞の基本構造とパラダイムを提示した。特に動詞について、談話資料を活用し、統語的分布を考慮して屈折と派生の記述を行う。

  • 休憩

  • 「淡路方言の活用とアクセント単位」

    中澤 光平 (国立国語研究所)

    本発表では淡路方言の動詞の活用の整理を通じて次の点について論じる。1. 派生接辞と屈折接辞の分類基準 2. 接辞同士の共起関係 3. アクセント単位を形成する接辞と語の単位の認定。

  • 「鹿児島県肝付町内之浦方言の動詞について」

    髙城 隆一 (東京大学大学院 修士課程)

    本発表では、鹿児島県の大隅半島東部に位置する肝付町内之浦 (旧内之浦町) における、動詞についての調査結果を報告した。今年度の臨地調査で得た、70代の生え抜き話者のデータに基づいて、内之浦方言の動詞のパラダイムを初めて示す。

  • 昼休み

  • 「甑島里方言のニ格形容詞」

    久保薗 愛 (愛知県立大学)

    本発表では、鹿児島県甑島里方言を対象に、形容詞の格について取り上げた。特に、ニ格をとりうる形容詞について、本方言においてこの構文が許容される条件 (名詞句タイプ・形容詞タイプ) について報告する。

  • 「日本手話の動詞・形容詞 ―何をどう記述するか―」

    高嶋 由布子 (日本学術振興会 特別研究員 / 東京学芸大学)

    本発表では、日本手話 (関東方言) の記述の作成について動詞・形容詞を中心に報告した。日本手話は都市型手話に分類され、動詞はこれまでの手話言語研究と同様、空間動詞、一致動詞、非一致動詞に分類できるが、一部不規則変化もあることを報告した。形容詞については、どのような構文で表れるものを形容詞と扱えるかを議論する。

  • 休憩

  • 「総括にかえて」

    平子 達也 (駒沢大学)

    発表資料

  • ディスカッション

  • 事務連絡