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談話

ノロの話

沖縄本部瀬底島

本談話について

瀬底島の歴代のノロについて、その逸話を含めつつ述べられ、さらに門中について触れられている。者は上間幸次郎氏、当時87歳。収録は1969年8月のものです。8分33秒。

上間幸次郎 ‘あんさー だい‐‘いちだい‐ぬ ぬる‐はら‐ぬ はなしー さー‐やー.
ʔaɴsaː dai‐ʔiʨidai‐nu nuɾu‐haɾa‐nu hanaɕiː saː‐jaː.
「それでは、第一代のノロからの話をしましょうね。」
上間幸次郎 あー すく‐ぬ ぬる‐や
aː suku‐nu nuɾu‐ja
「あ、瀬底のノロは」
上間幸次郎 むかーし たち‐ふゎじまい‐はら‐ぬ …… だいじゅーさんだい‐の しょーけい‘おー じだい ちー
mukaːɕi taʨi‐ɸaʥimai‐haɾa‐nu …… daiʥuːsandai‐no ɕoːkeiʔoː ʥidai ʨiː
「昔(瀬底の)立ち始め……第十三代の尚敬王時代になって」
上間幸次郎 こーぎ‐ぬ めいれい‐さい ぬる なてーぬ‐ぐとぅ ‘あいん‐よー, こーぎぬ.
koːgi‐nu meiɾei‐sai nuɾu nateːnu‐gutu ʔaiɴ‐joː, koːginu.
「公儀の命令で、ノロになったようであるよ、公儀(のね)。」
上間幸次郎 ‘えー ,すんねー, こーぎ‐や しょーけい‘おー‐や ぐしちゃん‐‘えーかた‐ぬ しゅっしん‐ぬ ばしゅ いぇーとぅ,
ʔeː sunneː koːgi‐ja ɕoːkeiʔoː‐ja guɕiʨaɴ‐ʔeːkata‐nu ɕuɕɕiɴ‐nu baɕu jeːtu,
「えー、それで、公儀は、尚敬王は、具志頭親方の出身の所だから、」
上間幸次郎 すーく‐‘えーきーぬ にでーめ‐ぬ ふゎーふーじー‐ぬ ばしょ‐をぅてぃ
suːku‐ʔeːkiːnu nideːme‐nu ɸaːɸuːʥiː‐nu baɕo‐wuti
「瀬底エーキーの二代目の先祖の場所で、」
上間幸次郎 ‘うかみんちゅ ‘あつみてぃ きまてーぬ ぐとぅ ‘あいん.
ʔukaminʨu ʔaʦumiti kimateːnu gutu ʔaiɴ.
「御神人を集めて、決まったようである。」
上間幸次郎 ぬる‐や, しまー‐ぬ ぬろー くーぎ‐ぬる りち ‘うしゅぬ めいれい‐しぇい ぬる ないみそーち,
nuɾu‐ja, ɕimaː‐nu nuɾoː kuːgi‐nuɾu ɾiʨi ʔuɕunu meiɾei‐ɕei nuɾu naimisoːʨi,
「ノロは、島のノロは、公儀ノロといって、御主の命令でノロにおなりになり、」
上間幸次郎 すく‘えーきー‐ぬ にでーめ‐ぬ ふゎーふじ‐ぬ ちょーれーびー いぇみしぇーたら, ‘まーや わからんしが,
sukuʔeːkiː‐nu nideːme‐nu ɸaːɸuʥi‐nu ʨoːɾeːbiː jemiɕeːtaɾa, ʔmaːja wakaɾaɴɕiga,
「瀬底エーキーの二代目の先祖の姉妹でいらっしゃったのか、そこはわからないが」
上間幸次郎 ‘まー ぬる ない ふゎじまい‐や すく‐‘えーきーぬ くゎー‘まーが いなぐんぐゎ‐はら なち,
ʔmaː nuɾu nai ɸaʥimai‐ja suku‐ʔeːkiːnu kʷaːʔmaːga jinaŋguŋgʷa‐haɾa naʨi,
「そこは、ノロ(の)なりはじめは、瀬底エーキーの子孫(で)娘から(ノロに)して,」
上間幸次郎 ‘うんちゅー‐が ‘いこつ‐や なま なぴゃ‘うぐゎん‐ねー (‘ある…) ‘あいん‐よー.
ʔunʨuː‐ga ʔikoʦu‐ja nama napjaʔugʷaɴ‐neː (ʔaɾu…) ʔaiɴ‐joː.
「その人の遺骨は、今ナピャウガンに(ある...)あるよ。」
上間幸次郎 ‘うぬ つぎ‐や また にでーめぬ … ‘あぬ
ʔunu ʦugi‐ja mata nideːmenu … ʔanu
「その次は、また(二代目の…あの)」
上間幸次郎 あー にでーめ‐ぬ ぬる‐や また ‘あがり‐ぬ いなぐんぐゎ‐ぬ なてぃ ちー,
aː nideːme‐nu nuɾu‐ja mata ʔagaɾi‐nu jinaguŋgʷa‐nu nati ʨiː,
「あー、二代目のノロは、またアガリの娘が(ノロに)なってきて、」
上間幸次郎 ‘うんちゅー‐や だー ‘いこつ‐や また ‘あまー めーばるぬ ぬるばか‐ねー ‘あいん‐ばー.
ʔunʨuː‐ja daː ʔikoʦu‐ja mata ʔamaː meːbaɾunu nuɾubaka‐neː ʔaim‐baː.
「その人は、それ遺骨は、また、あそこメーバルのノロ墓にあるんだ。」
上間幸次郎 ‘いりんやー‐ぬ ちゅー‐ぬー
ʔiɾiɴjaː‐nu ʨuː‐nuː
「イリンヤー(西屋)の人が(…)」
上間幸次郎 さんでー‐ぬる‐が ふゎーふじ ‘あー ぬる‐や ‘あが たんめー‐ぬ くゎー いぇーみしぇてーしが,
sandeː‐nuɾu‐ga ɸaːɸuʥi ʔaː nuɾu‐ja ʔaga tammeː‐nu kʷaː jeːmiɕeteːɕiga,
「三代(の)ノロの先祖(は)、ああ、ノロは、我々の祖父の子でいらしたが」
上間幸次郎 ‘うれー ‘あー ‘あがり‐ぬ じなん さんなん‐ぬ くゎー やてぃ なてぃしが
ʔuɾeː ʔaː ʔagaɾi‐nu ʥinaɴ sannaɴ‐nu kʷaː jati natiɕiga
「それは、ああ、アガリ(東)の次男三男の子で…(ノロに)なっているが、」
上間幸次郎 ‘うんちゅー(や)‐ぬ ‘いこつ‐や なま とーなんびゃー‐ねー ‘いじゃー ‘あいらはじ.
ʔunʨuː(ja)‐nu ʔikoʦu‐ja nama toːnambjaː‐neː ʔiʥaː ʔaiɾahaʥi.
「その人の遺骨は、今トーナンビャに行けばあるはずだ。」
上間幸次郎 ‘うぬ ぬる なてぃ ひちゃーとぅ とぅじ すーぬ ちゅーや をぅらーぬ しーくに.
ʔunu nuɾu nati hiʨaːtu tuʥi suːnu ʨuːja wuɾaːnu ɕiːkuni.
「そのノロになると、妻にする人は居らず、瀬底に。」
上間幸次郎 ‘あんさーに ‘あがり‐ぬ ふゎーふじ‐ぬ ‘うらさき‐ぬ なかじゅにー‐り ‘ゆーぬ ちゅー そーてぃちー, をぅとぅー しみーてぃ.
ʔaɴsaːni ʔagaɾi‐nu ɸaːɸuʥi‐nu ʔuɾasaki‐nu nakaʥuniː‐ɾi ʔjuːnu ʨuː soːtiʨiː, wutuː ɕimiːti.
「そこでアガリ(東)の先祖がウラサキ(浦崎)のナカソネ(仲宗根)という人を連れてきて夫にさせて。」
上間幸次郎 ひちちゃーとぅ ‘うんちゅー‐とぅ なかじゅに‐ぬる‐とぅ ‘うぬ ぬる‐とぅ‐ぬ なかねー いなぐんぐゎ ちゅい ‘まーりてぃ,
hiʨiʨaːtu ʔunʨuː‐tu nakaʥuni‐nuɾu‐tu ʔunu nuɾu‐tu‐nu nakaneː jinaguŋgʷa ʨui ʔmaːɾiti,
「そうしたら、その人と仲宗根ノロとそのノロとの仲に女の子が一人生まれて、」
上間幸次郎 ひちちゃーとぅ ‘うりー‐や ‘うぬ いなぐんぐゎ‐ぬ また ‘うやー‐ぬ かわい ぬる なてん‐よー.
hiʨiʨaːtu ʔuɾiː‐ja ʔunu jinaguŋgʷa‐nu mata ʔujaː‐nu kawai nuɾu nateɴ‐joː.
「そうすると、それは、その女の子が、また、親の代わりにノロになっているよ。」
上間幸次郎 ‘うり‐が あー さんでー… あー ゆでー‐めぬ ぬる.
ʔuɾi‐ga aː sandeː… aː judeː‐menu nuɾu.
「それが、ああ、三代の...ああ四代目のノロだ。」
上間幸次郎 ‘うちまぬ ぶっぱー, ‘うぬ ‘うちま‐ぬ ぶっぱー やしーが,
ʔuʨimanu buppaː ʔunu ʔuʨima‐nu buppaː jaɕiːga,
「内間のおばあさん、その内間のおばあさんであるが、」
上間幸次郎 ‘うんちゅー(が)‐やー あー どーこーじゅー‘いちねん‐ぬ かぬとぅ‐ぬ‐‘うーぬ とぅし‐ねー ‘まーりてぃ.
ʔunʨuː(ga)‐jaː aː doːkoːʥuːʔiʨineɴ‐nu kanutu‐nu‐ʔuːnu tuɕi‐neː ʔmaːɾiti.
「その人(が)は、ああ、道光11年のかのとのうの年に生まれて。」
上間幸次郎 たいしょー、 たいしょーさんねん‐がやー
taiɕoː, taiɕoːsanneɴ‐gajaː
「大正、大正3年かな、」
上間幸次郎 さんねん‐ぬ とぅら‐るしぬ さんぐゎち … けーまーち ひちちゃーしが,
sanɴen‐nu tuɾa‐ɾuɕinu saŋgʷaʨi … keːmaːʨi hiʨiʨaːɕiga,
「3年の寅年の3月…に急にお亡くなりになってしまったが、」
上間幸次郎 ちょーど ぱちじゅーし‐ぬ とぅし‐ねー まーしみそーちん‐ばー
ʨoːdo paʨiʥuːɕi‐nu tuɕi‐neː maːɕimisoːʨim‐baː
「ちょうど84の歳にお亡くなりになったんだ。」
上間幸次郎 ‘うぬ ちゅー‐が まーち ひちちゃーとぅ また ‘あがり‐ぬ
ʔunu ʨuː‐ga maːʨi hiʨiʨaːtu mata ʔagaɾi‐nu
「その人が亡くなってしまうと、また、アガリ(東)の」
上間幸次郎 ひちでーめ‐ぬ ふゎーふじ‐ぬ ちょーじょ, めーぬやー‐ぬ ぶっぱー‐が ないみそち,
hiʨideːme‐nu ɸaːɸuʥi‐nu ʨoːʥo, meːnujaː‐nu buppaː‐ga naimisoʨi,
「7代目の先祖の長女,(で)メーヌヤー(前の家)のおばあさんが(ノロに)なりなさって、」
上間幸次郎 ‘うん ちゅー‐が ばす‐ねー‐や ‘うーふじゅくとぅ ‘あらすいん ‘いじてぃん‐よー ぬる‐ぬ.
ʔun ʨuː‐ga basu‐neː‐ja ʔuːɸuʥukutu ʔaɾasuiɴ ʔiʥitiɴ‐joː nuɾu‐nu.
「その人の時には、ウフジュクと争いも出てね、ノロの。」
上間幸次郎 ‘うふじゅく‐ぬ たち‐ふゎじまい やとぅ ‘うれー しまぶく げん‘いちろー‐さん‐が ‘うり さーに
ʔuɸuʥuku‐nu taʨi‐ɸaʥimai jatu ʔuɾeː ɕimabuku geɴʔiʨiɾoː‐saɴ‐ga ʔuɾi saːni 
「ウフジュクの立ち始め(起こり)だから、それは、島袋源一郎さんが何して」
上間幸次郎 ‘あらしー ‘いじーてぃ, ‘うふじゅく‐ぬ くゎーまーが‐はら るく… ‘うぬ
ʔaɾaɕiː ʔiʥiːti, ʔuɸuʥuku‐nu kʷaːmaːga‐haɾa ɾuku… ʔunu
「争い(が)出て(起きて)、ウフジュクの子孫から6…その」
上間幸次郎 あー ‘うちま ぬる‐ぬ ぶっぱー‐が ‘あとぅ‐や るくでーめ‐や ‘いじたん‐ばー.
aː ʔuʨima nuɾu‐nu buppaː‐ga ʔatu‐ja ɾukudeːme‐ja ʔiʥitam‐baː.
「あー、内間ノロのおばあさんが、後は、6代目は出ているわけ。」
上間幸次郎 みーぐゎーやー‐ぬ しぇんたろー‐が とぅじ, ‘うふじゅく‐ぬ げんたろー‐り ‘いーみしぇん ちゅー‐ぬ しーじゃ…ぬ ‘いじーてぃ,
miːgʷaːjaː‐nu ɕentaɾoː‐ga tuʥi, ʔuɸuʥuku‐nu gentaɾoː‐ɾi ʔiːmiɕen ʨuː‐nu ɕiːʥa…nu ʔiʥiːti,
「ミーグァーヤー(目小屋)の仙太郎の妻(で)、ウフジュクの源太郎と言いなさる人の…出て、」
上間幸次郎 ぐるくにん ひちちゃーとぅ ‘あん‐が ‘いじーぬ むのー ‘あらぬ りち, ‘あれー くとぅわってぃ ちー
guɾukuniɴ hiʨiʨaːtu ʔaɴ‐ga ʔiʥiːnu munoː ʔaɾanu ɾiʨi, ʔaɾeː kutuwatti ʨiː
「5,6年経ってあれが(その人が)(ノロに)出るものではないといって、あれ(その人)は断ってきて」
上間幸次郎 ひちちゃーとぅ, ‘あま‐ぬ ぬる‐‘うまーや ひちでーめ‐ぬ ぬる‐や また ‘あがり‐ぬ
hiʨiʨaːtu, ʔama‐nu nuɾu‐ʔumaːja hiʨideːme‐nu nuɾu‐ja mata ʔagaɾi‐nu
「そしたら、むこうのノロ親は、7代目のノロは、また、アガリ(東)の」
上間幸次郎 かぐろーさん‐が ちょーじょ‐ぬ ‘いじたん‐ばー.
kaguɾoːsaɴ‐ga ʨoːʥo‐nu ʔiʥitam‐baː.
「嘉五郎さんの長女が出たわけ。」
上間幸次郎 ‘あま げんざい ‘あり‐が ぬる なてぃ ちーしが,
ʔama genʣai ʔaɾi‐ga nuɾu nati ʨiːɕiga,
「今現在あれが(その人が)ノロになってきているが、」
上間幸次郎 よんだいめ‐の ぬる‐や
jondaime‐no nuɾu‐ja
「4代目のノロは」
上間幸次郎 (‘うつぃま ‘あぬ) ぬるるんち‐やーしき‐ねー やー ふち ‘めんせーてーしが.
(ʔuʦima ʔanu) nuɾuɾunʨi‐jaːɕiki‐neː jaː ɸuʨi ʔmeɴseːteːɕiga.
「(内間あの)ノロドンチ屋敷に家を葺いていらしたが」
上間幸次郎 ‘うぬ やー‐や (たっ…) ふきたて‐ごや, ‘あな‐やー
ʔunu jaː‐ja (tat…) ɸukitate‐goja, ʔana‐jaː
「その家は(…)葺き立て小屋、穴屋を」
上間幸次郎 ちゅくてぃ めんしぇーてーし(が), … なてぃてぃ ちー ちゃーとぅ ‘うぬ ‘あなやー‐ぬ
ʨukuti meɴɕeːteːɕi(ga), … natiti ʨiː ʨaːtu ʔunu ʔanajaː‐nu
「つくっていらっしたが、…になってくるとその穴屋は」
上間幸次郎 しら‘あいぬ かーてぃ, ‘なー てーふー ふきば をぅーとぅらん‐ぐとぅ なってぃ ちー ちゃー…, さんなん いきがんぐゎ そーてぃちー
ɕiɾaʔainu kaːti, ʔnaː teːɸuː ɸukiba wuːtuɾaɴ‐gutu natti ʨiː ʨaː…, sannaɴ jikigaŋgʷa soːtiʨiː
「シロアリが食ってもう台風(が)吹くと、居れなくなってきて…、三男(の)男の子(を)連れてきて、」
上間幸次郎 ‘うかみ‐ぬ めー‐ねー なー ‘ういとぅま しれみそーり りち ぐしー ‘うさぎてぃ,
ʔukami‐nu meː‐neː naː ʔuituma ɕiɾemisoːɾi ɾiʨi guɕiː ʔusagiti,
「お神の前で、もう、おいとまさせてくださいと、杯(を)お供えして」
上間幸次郎 ‘あんし ‘うぬ やー ‘うん ばす‐ねー ‘うん(ば) ひー‐ねーむる こんちぇん‐ばー.
ʔaɴɕi ʔunu jaː ʔuɴ basu‐neː ʔuɴ(ba) hiː‐neː muɾu konʨem‐baː.
「そして、その家は、その時に、その日にすべて壊したんだ。」
上間幸次郎 こんち しじみてぃ ちーちゃーとぅ, ‘うぬ ゆるー‐や ‘うぬ さんなん‐ぬる やー ‘いじ
konʨi ɕiʥimiti ʨiːʨaːtu, ʔunu juɾuː‐ja ʔunu sannaɴ‐nuɾu jaː ʔiʥi
「壊して片付けてしまうと、その夜はその三男ノロの家で、」
上間幸次郎 どぅーぬ また‘まーが, ‘あぬ
duːnu mataʔmaːga, ʔanu
「自分の曾孫、あの」
上間幸次郎 ほんけ‐ぬ また‘まーが, ‘あー めーなち ゆふいみそち, ひちちゃーとぅ ‘うぬまま ちゃーまーし.
hoŋke‐nu mataʔmaːga, ʔaː meːnaʨi juɸuimisoʨi, hiʨiʨaːtu ʔunumama ʨaːmaːɕi.
「本家の曾孫、ああ、前にして、お休みになって、そうすると、そのまま亡くなった。」
上間幸次郎 ‘うかみ‐ねー ‘うゆび すたぬ ゆるー まーしみそーち,
ʔukami‐neː ʔujubi sutanu juɾuː maːɕimisoːʨi,
「お神にお許しをえた夜(に)お亡くなりになり、」
上間幸次郎 なーちゃー‐や さんぐゎち‐ぬ じゅーぐるくにち‐ぐる やらんがやー, ひー‐やー ‘うびらんしが たしかに さんぐゎち とぅらどぅし やしが,
naːʨaː‐ja saŋgʷaʨi‐nu ʥuːguɾukuniʨi‐guɾu jaɾaŋgajaː, hiː‐jaː ʔubiɾaɴɕiga taɕikani saŋgʷaʨi tuɾaduɕi jaɕiga,
「その翌日は3月の15,6日ごろでなったかな、日は覚えていないが、確かに3月寅年であるが、」
上間幸次郎 ‘あー たいしょー さんねん‐がやー とぅら‐どぅし.
ʔaː taiɕoː sanneɴ‐gajaː tuɾa‐duɕi.
「ああ、大正3年かな、寅年は。」
上間幸次郎 まーしぬ… ひちちぇーせ, ふんとー ‘おかみ‐ん めんしぇーさーり ‘うむてぃ しんじらりん‐よー.
maːɕinu… hiʨiʨeːse, ɸuntoː ʔokami‐m meɴɕeːsaːɾi ʔumuti ɕinʥiɾaɾiɴ‐joː.
「亡くなった…そうなったのも、ほんとうに、お神もいらっしゃるのだなと思って信じられるよ。」
上間幸次郎 ‘なー にんじん‐ぬ ‘おかみ‐ぬ めーれーら ‘なー ぬる ‘ういとぅま しみそーり りちー やー しじみてぃ ひちちゃーとぅ ‘うぬ まーまー まーちゃん‐り ‘いーね
ʔnaː ninʥin‐nu ʔokami‐nu meːɾeːɾa ʔnaː nuɾu ʔuituma ɕimisoːɾi ɾiʨiː jaː ɕiʥimiti hiʨiʨaːtu ʔunu maːmaː maːʨaɴ‐ɾi ʔiːne
「もう人間が御神の命令なのに、もう、ノロ(を)おいとまさせてくださいといって、家(を)片付けしてしまったら、そのままお亡くなりになったというならば」
上間幸次郎 なんだか ふんとー ‘うかみ‐ん めんしぇーさやー りち ‘うむてぃ しんじらってぃちー
nandaka ɸuntoː ʔukami‐ɴ meɴɕeːsajaː ɾiʨi ʔumuti ɕinʥiɾattiʨiː
「なんだか、ほんとうに、御神もいらっしゃるんだなと思って信じられてきて、」
上間幸次郎 ‘あんち しまー‐や むかし‐はら しじだかーさぬ
ʔanʨi ɕimaː‐ja mukaɕi‐haɾa ɕiʥidaka:sanu
「それで、島は、昔から霊力豊で、」
上間幸次郎 ふゎなりや すくぬ ‘うたき ‘うかみ‐ぬ ‘えんがにん ‘うがまりーし, ‘うりん ひちゃしが,
ɸanaɾija sukunu ʔutaki ʔukami‐nu ʔeŋganiɴ ʔugamaɾiːɕi, ʔuɾiɴ hiʨaɕiga,
「離れ(島)は、瀬底の御嶽御神のエンガニも拝めるの、これもしたが(エンガニーも拝んだが)」
上間幸次郎 ‘うりー なま ‘うがまらん なってぃ, ‘うれー ぬる‐ぬ‐どぅ ‘うっとぅる りちぬ ふゎなし‐ん ‘あてぃっちー ひちゃーしが, どぅーなー‐てぃん ‘えんがにー ‘うがみん‐でぃ
ʔuɾiː nama ʔugamaɾan natti, ʔuɾeː nuɾu‐nu‐du ʔuttuɾu ɾiʨinu ɸanaɕi‐ɴ ʔatitʨiː hiʨaːɕiga, duːnaː‐tiɴ ʔeŋganiː ʔugamin‐di
「それは、今は、拝めなくなって、それは、ノロが(鐘を)打っているという話もあってか、自分たちもエンガニ拝もうと」
上間幸次郎 ‘あっち ひち
ʔatʨi hiʨi
「歩いて」
上間幸次郎 ぺーちんやー‐にーてぃ ‘えんがにー ‘うがーり しーねーや
peːʨiɴjaː‐niːti ʔeŋganiː ʔugaːɾi ɕiːneːja
「ペーチンヤーでエンガニーを拝むと」
上間幸次郎 ‘あんまり なー ‘あちら … しーねー (‘うふ ‘うぬ) ‘うゆみ しにぐぬ‐ばー
ʔammaɾi naː ʔaʨiɾa … ɕiːneː (ʔuɸu ʔunu) ʔujumi ɕinigunu‐baː
「…(単語の確定が難しい。)(…)ウユミ(節句)シヌグの時、」
上間幸次郎 ‘うちぐしく‐までぃ なん ちゅい ぬぶいみしぇーたん‐よー やまんみーち.
ʔuʨiguɕiku‐madi nan ʨui nubuimiɕeːtaɴ‐joː jamammiːʨi.
「ウチグシクまで、一人で、登りなさったんだ山のなかへ。」
上間幸次郎 ‘あまー‐じ ‘うむいがち しーみしぇんばー.
ʔamaː‐ʥi ʔumuigaʨi ɕiːmiɕembaː.
「あそこで思いがけなさるんだ。」
上間幸次郎 なー ‘うむいがちや ちゃんちが しーがすーら,
naː ʔumuigaʨija ʨanʨiga ɕiːgasuːɾa,
「もう、思いがけは、どうのようにするのか(わからないが)」
上間幸次郎 ひち ‘あり‐が ‘めんそーち,
hiʨi ʔaɾi‐ga ʔmeɴsoːʨi,
「そうして、あれがいらして、」
上間幸次郎 めーぬ‐ぺーちん‐やー‐ち ‘めんそーち, とー やがーてぃ ‘うぬ
meːnu‐peːʨiɴ‐jaː‐ʨi ʔmensoːʨi, toː jagaːti ʔunu
「前のペーチンヤーにいらして、「さあ、もうすぐその」
上間幸次郎 かねー ‘うがまりーとぅ むる しじかに ひちゅーりよーやーり ‘いーば,
kaneː ʔugamaɾiːtu muɾu ɕiʥikani hiʨuːɾijoːjaːɾi ʔiːba,
「鐘(が)拝めるから、みんな静かにしていなさいよ」と」
上間幸次郎 ‘いちゅーてぃ しみせーたしが, ‘あんち しーば すぐ ‘うがまりたん‐よー.
ʔiʨuːti ɕimiseːtaɕiga, ʔanʨi ɕiːba sugu ʔugamaɾitaɴ‐joː.
「いうといってしなさったが、そうすると、すぐに(鐘は)拝めたんだ。」
上間幸次郎 ‘あんとぅ ‘うれー また ぬる‐ぬ‐どぅ ‘うっとぅる りちーぬ ふゎなしー ‘あいたしが ふれー ふんとー
ʔantu ʔuɾeː mata nuɾu‐nu‐du ʔuttuɾu ɾiʨiːnu ɸanaɕiː ʔaitaɕiga ɸuɾeː ɸuntoː
「それで、これは、また、ノロが(鐘を)打っているという話があったが、それは、本当に」
上間幸次郎 ぬる‐ぬ‐が ‘うっとぅたら, また ‘うかみ‐が‐が ‘うちみしぇーたら, なー まー‐や たしかみららん‐ばー どぅーなー‐ぬ.
nuɾu‐nu‐ga ʔuttutaɾa, mata ʔukami‐ga‐ga ʔuʨimiɕeːtaɾa, naː maː‐ja taɕikamiɾaɾam‐baː duːnaː‐nu.
「ノロが(鐘を)打っていたのか、また御神が(鐘を)お打ちになられたのか、もう、そこは、確かめられないわけだ、自分で。」
上間幸次郎 だー ‘うれー なー どぅーなー‐ぬ ‘うがらりば‐る わかい‐る.
daː ʔuɾeː naː duːnaː‐nu ʔugaɾaɾiba‐ɾu wakai‐ɾu.
「ほれ、それは、もう自、分たちが拝めれば、わかる。」
上間幸次郎 すーしが ‘うぬ ‘あとぅ‐はら‐や なー ぜったい うがまらん.
suːɕiga ʔunu ʔatu‐haɾa‐ja naː ʣettai ugamaɾaɴ.
「だが、その後からは、もう、絶対拝めない。」
上間幸次郎 はに‐や ‘うん ちゅーまりー, ‘あんちぬ むのー ‘うがまってぃ.
hani‐ja ʔun ʨuːmaɾiː, ʔanʨinu munoː ʔugamatti.
「鐘は、その人までで、あのようなものをおがんで。」
上間幸次郎 ‘うん ちゅー‐が まーち ひち‐はら ‘うがまらんんしが
ʔun ʨuː‐ga maːʨi hiʨi‐haɾa ʔugamaɾanɴɕiga
「あの人が亡くなってしまってから拝めないが、」
上間幸次郎 はんち‐ぬ りとー‐や すびてぃ ‘あんち‐ぬ ‘あー しじらかーさぬ ‘うりやしが
hanʨi‐nu ɾitoː‐ja subiti ʔanʨi‐nu ʔaː ɕiʑiɾakaːsanu ʔuɾijaɕiga
「このような離島は、すべてあのような、ああ、霊力豊かで何だけれども」
上間幸次郎 しまー‐ぬ ぬろー なま‐まりー ちょーろ ひちだい なてぃ ちーしが
ɕimaː‐nu nuɾoː nama‐maɾiː ʨoːɾo hiʨidai nati ʨiːɕiga
「島のノロは、今までちょうど7代(に)なってきているが」
上間幸次郎 ‘うかみん‐ちゅ むる きまたし‐や じゅーさんだい‐ぬ そーけいうぉーじだい,
ʔukamiɴ‐ʨu muɾu kimataɕi‐ja ʥuːsandai‐nu soːkeiwoːʥidai
「御神人(が)皆決まったのは、13代の尚敬王時代、」
上間幸次郎 ぐしちゃん‐‘えーかた‐ぬ じだい‐ねー きまてぃーらり ‘うみん わぬや.
guɕiʨaɴ‐ʔeːkata‐nu ʥidai‐neː kimatiːɾaɾi ʔumiɴ wanuja.
「具志頭親方の時代に決められたと思う、私は。」
上間幸次郎 ‘うぬまんぐら‐や (‘いくち) ‘いくちー むんちゅー‐ぬ しーく‐に ‘あたーが‐り ‘いーねー‐や
ʔunumaŋguɾa‐ja (ʔikuʨi) ʔikuʨiː munʨuː‐nu ɕiːku‐ni ʔataːga‐ɾi ʔiːneː‐ja
「その頃は、(いくつ)いくつ門中が瀬底にあったかというと」
上間幸次郎 むとぅーま‐ぬ むんちゅー‐ぬ ‘あいん‐よー.
mutuːma‐nu munʨuː‐nu ʔaiɴ‐joː.
「6ヶ所の門中があるよ。」
上間幸次郎 ‘うふじゅく‐むんちゅー ‘うり‐はら なから‐むんちゅー, なかふる‐むんちゅー
ʔuɸuʥuku‐munʨuː ʔuɾi‐haɾa nakaɾa‐munʨuː, nakaɸuɾu‐munʨuː
「ウフジュク門中、それから仲田門中、仲程門中、」
上間幸次郎 ‘うり‐はら ひちゃんふゎた‐むんちゅー ‘うり‐はら ‘あがりぬ‐むんちゅー ‘うくばる‐むんちゅー ‘うぬ むとぅ‐ま‐ぬ あー むんちゅー‐ぬ めんしぇーてん.
ʔuɾi‐haɾa hiʨaɴɸata‐munʨuː ʔuɾi‐haɾa ʔagaɾinu‐munʨuː ʔukubaɾu‐munʨuː ʔunu mutu‐ma‐nu aː munʨuː‐nu meɴɕeːteɴ.
「それからヒチャンハタ門中、それからアガリ(東)門中、奥原門中、その6ヶ所のああ門中がいらしたようだ。」
上間幸次郎 すびてぃ いなぐがみ‐や ‘うぬ むとぅま‐ぬ くゎー‐‘まーが‐はら
subiti jinagugami‐ja ʔunu mutuma‐nu kʷaː‐ʔmaːga‐haɾa
「すべて女神はその6ヶ所の子孫から(で)、」
上間幸次郎 なま わーが むぬ ‘うむてぃ‐はら わなー なー やー むる ちじん‐ばー.
nama waːga munu ʔumuti‐haɾa wanaː naː jaː muɾu ʨiʥim‐baː.
「今私が物心ついてから、私は、もう家(を)全部継いでいるわけ。」
上間幸次郎 すーとぅ ‘うかみ‐‘あらすい‐ん むかーし‐はら ‘あてぃちぇーしが むる ‘うり ちー
suːtu ʔukami‐ʔaɾasui‐m mukaːɕi‐haɾa ʔatiʨeːɕiga muɾu ʔuɾi ʨiː
「だから御神争いも、昔からあってきたが、皆何して」
上間幸次郎 ‘あー やてーしが ‘うぬ ぬる ‘うかみん‐ちゅ‐や すびて ‘うぬ くゎー‐‘まーが‐はら むる ‘いじーてぃ, ひち,
ʔaː jateːɕiga ʔunu nuɾu ʔukamin‐ʨu‐ja subite ʔunu kʷaː‐ʔmaːga‐haɾa muɾu ʔiʥiːti, hiʨi,
「ああ、そうだったが、そのノロ、御神人は、すべてその子孫から皆出てきて、それで」
上間幸次郎 ぬる‐や ‘あがり‐ん くゎー‐‘まーが, にがみ‐や ‘うふじゅく‐ぬ くゎー‐‘まーが, ‘うちがみ‐や あー なかふる‐むんちゅー
nuɾu‐ja ʔagaɾi‐ɴ kʷaː‐ʔmaːga, nigami‐ja ʔuɸuʥuku‐nu kʷaː‐ʔmaːga, ʔuʨigami‐ja aː nakaɸuɾu‐munʨuː
「ノロは、アガリ(東)の子孫、根神は、ウフジュクの子孫、おきて神は、ああ、仲程門中、」
上間幸次郎 ‘うり‐はら ‘うぬ たちがみ りち ‘まーにが ‘うふゆみ しぬぐ‐ねー ぬいし‐や
ʔuɾi‐haɾa ʔunu taʨigami ɾiʨi ʔmaːniga ʔuɸujumi ɕinugu‐neː nuiɕi‐ja
「それから、そのタチ神といって、馬にかウフユミシヌグに乗るのは」
上間幸次郎 ‘あー なかふる‐むんちゅー, ‘うくばる‐むんちゅー ‘あがりぬ‐むんちゅー‐はら むる ‘いじーてぃ ‘あんち つぁっくぬ‐ぐとぅ ‘あいん‐り.
ʔaː nakaɸuɾu‐munʨuː ʔukubaɾu‐munʨuː ʔagaɾinu‐munʨuː‐haɾa muɾu ʔiʥiːti ʔanʨi ʦakkunu‐gutu ʔaiɴ‐ɾi.
「ああ仲程門中、奥原門中、アガリ(東)の門中から皆が出て、あんなにしているようであるとさ。」
上間幸次郎 ‘あんとぅ ふれー しま‐や むかし‐はら ‘うかみ‐ぐに りち,
ʔantu ɸuɾeː ɕima‐ja mukaɕi‐haɾa ʔukami‐guni ɾiʨi
「だから、これは、島は、昔から御神国といって、」
上間幸次郎 むかし‐ぬ ‘うた‐ねー ‘うしれーくぶしねー ‘あいん‐よー.
mukaɕi‐nu ʔuta‐neː ʔuɕiɾeːkubuɕineː ʔaiɴ‐joː.
「昔の歌に臼太鼓節にあるよ。」
上間幸次郎 「しすく てるしまや だんす とぅゆまりる しるくち‐や ‘うたき なか‐や ‘えぐに」
ɕisuku teɾuɕimaja daɴsu tujumaɾiɾu ɕiɾukuʨi‐ja ʔutaki naka‐ja ʔeguni
「「瀬底照る島はなるほど富みさかえた(島だ)周囲は御嶽、中は豊かな国だ」」
上間幸次郎 しるくち‐や しゅーいさい はっちぇーらり ‘うむいん.
ɕiɾukuʨi‐ja ɕuːisai hatʨeːɾaɾi ʔumuiɴ.
「シルクチは周囲と書いてあると思う。」
上間幸次郎 すーい‐や ‘うたき, しるくち りち
suːi‐ja ʔutaki, ɕiɾukuʨi ɾiʨi
「周囲は御嶽、シルクチといって」
上間幸次郎 ‘あんち‐ぬ くとぅー‐ぬ ‘あいとぅ, えーとぅ ‘うかみ‐ぐとー ‘うっかり ひちー‐や ならん‐さー‐りばー.
ʔanʨi‐nu kutuː‐nu ʔaitu, eːtu ʔukami‐gutoː ʔukkaɾi hiʨiː‐ja naɾaɴ‐saː‐ɾibaː.
「あんなことがあるから、だから御神ごとは軽々しくしてはいけないというわけだ。」
上間幸次郎 なー ‘うっさー.
naː ʔussa:.
「もうそれだけだ。」