日本の危機言語

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みんな¯  minna  [名]   L0  (宮古水納)
(1) みんな。みんなじま【水納。水納島】。
備考 〈みんな〉という地名は他に本部町の水納島があり、同源かもしれない。宮古諸島の地図を含む「正保の国絵図」(1646年)には島の名前が「みつな」と表記されており、その表記を素直に解釈すれば、〈みんな〉の地名が古くは〈みつな〉あるいは〈みずな〉と発音されていたことが示唆される。〈*つぬ〉>〈んぬ〉「角」、〈*つな〉>〈んな〉「綱」のように、水納島方言を含む多良間諸方言では〈ナ〉行に先行する〈つ〉が撥音化するという音変化が起こっているので、音韻史の観点からは矛盾が生じない。さらに、発音が〈みずな〉であった方が漢字表記に「水」という字が当てられたことも説明が付く。そうならば、多良間諸方言に〈な〉行に先行する〈つ〉の撥音化が17世紀半ば以降に起きたことが言える。〈みんな〉の語源は未詳だが、〈みつな/みずな〉が本来の発音ならば、a型のアクセントに分類されることから、〈みーつ〉「三つ」か〈みず〉「水」が含まれることが考えられる。前者は島の形がほとんど三角であることから、その形にちなんだ〈みつな〉「三つのナ」(ただし〈な〉は未詳)ということになる(ただし、本部町の水納島は三角の形をしているとは言えない)。後者は、島に水がないことから、その状況を形容した〈みずな〉「水無し」(〈あてぃな〉<〈*あてなし〉「子供」と同じく〈な〉は〈*なし〉「無し」の〈し〉脱落形)ということになる。琉球語の地名に対してどのようにして当て字が付けられたかについてよく分からないが、(民俗語源説であれ)原義を意識したケースが少なくない印象がある。宮古島の南部の集落である〈うるか〉を「砂川」と表記するのには、〈うる〉が「砂」を意味するという知識が必要となる類である(最も〈うるか〉は宮古諸方言のアクセントからしてc型として再建されるので、語源説としてそれをそのまま受け入れることが躊躇されるが)。ともかく、当て字を付けた人が語源説として「水」を意識していたことは想像できる
アクセント資料
(1)
みんなまい=
minnamai=
X=mai
あらん
araN
...
(2)
みんなまい=
minnamai=
X=mai
あらん
araN
...
(3)
ん]め
m]me
X=mai
みんなまい=
minnamai=
...
あらん
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(4)
ん]め
m]me
X=mai
みんなまい=
minnamai=
...
あらん
araN
出典
セリック・ケナン、大浦辰夫(2022)『みんなふつ語彙集』国立国語研究所みんなふつ語彙集. http://doi.org/10.15084/00003679